「ポニョ」舞台の鞆の浦、遥かに遠い「本当の景観維持」

真の「景観維持」には自家用車乗り入れ規制の検討を

鞆の浦唯一のスーパーも閉店してしまった(写真提供:しののめちゃん)

 さらに、鞆の浦で深刻な問題となっているのが過疎化と高齢化だ。  鞆の浦では2016年2月に唯一のスーパーマーケットであった「セルコ鞆店」が閉店。高齢化が進んでいる鞆の浦の住民にとって、公共交通の維持は喫緊の課題となっている。  鞆の浦では地元NPO法人が空き家バンクを創設、空き家再活用の努力も行っているが、既に空き家となった旧家が目立つようになってきている。鞆の浦の住民は車で30分弱の距離にある福山市街地に通勤する人が多いが、朝晩の渋滞を嫌い、旧家を離れて市街地に移り住む人もいるという。  本当の意味での「港町の景観の維持」は、そこに住む人がいてこそ成り立つものだ。今後「誰も住まない港町」となってしまえば、鞆の浦の景観が守られるはずはない。

トランジットモール化された金沢市の横安江町商店街(写真提供:金沢まちゲーション)

 埋め立てが中止となったいま、「本当の景観維持」のためには、観光客の路線バス利用の促進やパークアンドライドの推進、更には一歩進んで、観光客の自家用車乗り入れ規制を行いトランジットモール化するなど、将来に亘って住民が住みやすく、景観維持にも繋がるような街づくりをしていくことが必要なのではないだろうか。  歴史的町並みを維持するための自家用車乗り入れ規制は欧州などでは一般的なことであるが、日本では石川県金沢市などごく一部でしか行われていないのが実情だ。  もし鞆の浦がこのような街づくり政策を取ることができれば、それが1つのモデルケースとなり、こうした動きが鞆の浦から全国の景勝地へと広がっていくかも知れない。 <取材・文・写真/都市商業研究所 写真提供/しののめちゃん、金沢まちゲーション都市商業研究所 若手研究者で作る「商業」と「まちづくり」の研究団体。Webサイト「都商研ニュース」では、研究員の独自取材や各社のプレスリリースなどを基に、商業とまちづくりに興味がある人に対して「都市」と「商業」の動きを分かりやすく解説している。Twitterアカウントは「@toshouken」 ※都商研ニュースでは、今回の記事のほかにも下記のような記事を掲載中 ・多賀城駅前に市立”ツタヤ図書館”-真価問われるツタヤ図書館事業東急ハンズ金沢店、2016年秋開店-4月28日開業の東急スクエアに渋谷パルコ、建替えで8月7日閉館-2019年再開業へ
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