「ポニョ」舞台の鞆の浦、遥かに遠い「本当の景観維持」

根本的な問題は解決されぬまま、観光客増で渋滞悪化

鞆の浦の中心部を走る県道。非常に狭い

 埋め立て架橋の中止が決まったことにより、鞆の浦の海岸線は現状のまま改善はされないことになった。ところが、その一方で、鞆の浦では特に映画『崖の上のポニョ』公開以来観光客が増加している。以前よりラッシュ時に渋滞が発生していた鞆の浦であったが、観光シーズンには更に劣悪な渋滞が発生するようになっている。

JR福山駅前には鞆の浦方面へと向かうバスが並ぶ

 先述の通り、架橋に変わってトンネルを掘ることでバイパスを建設する計画もあるが、開通までは数十年の期間を要することが予想される上に、交通事情に詳しくない観光客は鞆の浦の狭い路地まで車で乗り入れることが多いであろう。  福山駅から鞆の浦まではかつて鞆鉄道があり、現在も同社のバスが日中1時間に3本前後運行されている。そのため、交通の便は悪いとは言えないが、バス車内には観光客の姿はそれほど多くない。その上、観光シーズンになるとバスも渋滞に巻き込まれてしまい、特に鞆の浦の中心部を通る路線では全く身動きが取れなくなることも少なくない。

狭い街路を走る鞆鉄道バス(写真提供:しののめちゃん)

次のページ 
真の「景観維持」には自家用車乗り入れ規制の検討を
1
2
3
4