私は舛添知事のこの度の行動に限って言えば、昭和42(1967)年から54年まで三期都知事を務めた美濃部亮吉氏に似ていると思う。
美濃部氏は、北朝鮮政府や朝鮮総連の要請を受けて、当時の文部省の反対を押し切り、朝鮮学校を各種学校として認可した。また、悪名高い「帰国事業」の手助けをして、多くの朝鮮人や日本人配偶者を北朝鮮に送り、死に追いやった。共産主義独裁政権をこのように支援することで、美濃部氏は平壌に招かれ、金日成から直接謝辞を受けたのである。
ちなみに朝鮮学校とは、我々日本人が想像するようなまともな教育機関ではなく、朝鮮総連の下部組織である。元校長が日本人拉致の実行犯で国際手配を受け、別の元校長は覚せい剤密輸で逮捕されるなど、現在も警察や公安調査庁などの監視対象団体に指定されている。
朴槿恵大統領から要請され、韓国人学校に便宜を図る舛添氏と、金日成の望みどおり朝鮮学校に便宜を図った美濃部氏の共通点は、日本国内で大きな反対があったにもかかわらず、都民福祉よりも外国首脳からの要請を優先してしまう点である。
美濃部氏の場合は、筋金入りの共産主義者だったからまだ理解できる。舛添知事の背景はまだよくわからない。これから注視する必要があるだろう。
最後に読者の誤解を招かぬよう一つだけ申し上げたいのは、筆者は韓国バッシングをしたいのではない。筆者は昨年12月の日韓合意を否定的に見てはいない。
なぜならば、日本やアジア諸国、アメリカなど自由主義諸国の外交・防衛の核心は、共産主義中国の侵略行為と北朝鮮の暴発をいかに食い止めるかであり、そのためにも韓国を味方に付けておくことは必要だからだ。
竹島の不法占拠や従軍慰安婦の捏造など、我々日本人には認めがたい問題を抱えているが、中国や北朝鮮に軍事的に脅かされている私たちにとって一定の日韓連携は必要と考える。
【野田数(のだかずさ)】
教育評論家。東京都出身。早稲田大学教育学部卒業後、東京書籍に入社するが、歴史教科書のあり方に疑問を持ち、政治の道へ。東京都議会議員時代に石原慎太郎氏、猪瀬直樹氏と連携し、朝鮮学校補助金削減、反日的な都立高校歴史必修教材の是正を実現し、尖閣購入問題などで活躍。その後、多様な経験を活かし、ビジネス誌や論壇誌で本質を突いた社会批評を展開している。
<写真/
Jeff Boyd>