ここで舛添都政を、歴代知事の行動と比較してみたいと思う。
運輸大臣等を歴任した石原慎太郎元知事は、運輸行政に力点を置いていた。それまで国内線中心の羽田空港に国際便を導入することで、新興国に比べて競争力を失っていた首都東京の空港を復活させた。実現できなかったが、米軍横田基地に民間航空機が参入できるようアメリカと交渉も行ってきた。上海やシンガポール、釜山港などに後れを取っていた東京港の国際競争力強化に取り組んでいた。これらは、いずれも都民の利便性や都市機能を向上するための取り組みであり、石原氏の得意分野だった。
また、作家の猪瀬直樹前知事は、オリンピックを50年ぶりに東京に招致した。トップセールスを行い、持ち前の論理力、説得力で東京都をPRし、積極的な外交を行った。東京オリンピックの経済効果は、日銀によると累計で最大30兆円と試算されており、長期不況で閉塞感の漂う日本社会に風穴を開けた功績は大きい。猪瀬氏には、長く都知事をやっていただきたかったものである。
それでは舛添知事の強みとは何だろうか? 舛添知事は厚生労働大臣経験者で国際政治学者のはずである。本来なら舛添都政は、厚生労働行政に力点を置いてもよいはずだ。また、国際政治学者を名乗るなら、外国との交渉が上手であってもおかしくないはずだ。
ところが、少子化対策として喫緊の課題である保育所設置ではなく、韓国人学校に貴重な都有地を貸し出すことを独断で決めてしまった。韓国側は大金星だろうが、舛添知事の説明の拙さもあってか、日本側から見れば特段の利益は見出せない。
厚生労働大臣経験の都知事が厚生労働行政である保育所設置を疎かにし、国際政治学者にもかかわらず外国との交渉が上手に見えないのは、ブラックジョークである。