イーロン・マスクの「スペースX」襲来で、変革を迫られる欧州ロケット業界

欧州の次世代ロケット「アリアン6」

アリアン6の打ち上げの想像図 photo by ESA-David Ducros, 2015

 そこで欧州は、2015年から「アリアン6」という新型ロケットの開発に着手した。アリアン6はアリアン5と基本的な構成は変わらないものの、より効率的に生産や運用ができるようにすることでコストダウンを図っている。  たとえば、これまでのアリアン・ロケットは開発では、欧州宇宙機関(ESA)を筆頭に官が主導していた。またESAは欧州各国が資金を出し合って運営されており、その出資比率に応じて、各国にロケットの開発要素を分け与えるという原則もあった。  当初、アリアン6もこのやり方で開発される予定だったが、実際に開発や製造、運用を担当する企業側が「そのような非効率なやり方ではファルコン9に勝てない」と反発し、開発の主導権が民間に移ることになった。すでに、欧州の航空宇宙大手エアバスとサフランが共同で出資した、「エアバス・サフラン・ローンチャーズ」という新会社が立ち上げられている。  また、ロケットの部品の一部を別のロケットと共有することで、大量生産によるコストダウンと、打ち上げ回数を稼ぐことによる信頼性の向上を図る。  これらの新方針により、アリアン6の打ち上げ価格は、衛星1機あたり60~70億円ほどになるといわれている。あくまで数字の上で、またこの目標が達成できた場合の話ではあるが、ファルコン9と十分に戦える金額である。
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アリアン6はファルコン9を倒せるか
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