健康食品で「健康になる」とは限らない理由
2016.02.19
「健康食品」のことがよくわかる本』(日本評論社)だ。執筆したのは、食品の安全情報についてブログなどで常に発信してきた国立医薬品食品衛生研究所安全情報部の畝山智香子氏。同書では、数々の具体例を挙げて、世間に流通する「健康食品」の実態をリポートされている。
同書を執筆した畝山氏に、世間に蔓延する「食品の安全性」に関する誤解を伺った。
「自然の食品でもさまざまなリスクはあります。科学的にはそれらのリスク因子を同定するだけでなく、どれだけそれらに暴露されるかによってリスクが決まってきます。
自然の肉や野菜、魚にもリスクはありますが、これらのリスクは“いろいろなものを食べる”ことで分散できます」
同じ野菜でも産地によって土壌や大気に含まれる微量元素が異なるし、調理法が違ってもリスクが異なる。そのため「地産地消」にこだわり過ぎたり、特定素材に偏り過ぎる食生活はリスクを増やすことになるのだ。
また、しばしば残留農薬や化学肥料の危険性が声高に叫ばれ、有機栽培やオーガニック栽培のものが健康によいとされるが、食品の安全性という観点ではこれらが優れているということはないという。
「農薬に関しては、医薬品同様厳正な管理システムがあり、きちんと指示通りに使えばリスクは最小限に抑えられるように設計されています。
一方、有機栽培でもカビ毒汚染や有毒植物の混入はあります。例えば2014年にはスイスのホレ社のオーガニックベビーフードにナス科の植物に含まれるアトロピンとスコポラミンが人体に影響が出る量検出されたためリコールされたこともあります。
また、ケージで飼われている鶏より放し飼いの鶏のほうをありがたがる人もいますが、放し飼いにされた鶏の卵には環境中に存在する鉛やダイオキシンなどの有害物質の濃度が高くなることが報告されています」
自然だから安全ということはなく、自然の脅威から守るために人間が手をかけているということは見失われがちな事実だ。
「過剰なこだわりでそれ以外を認めないような考え方は、逆に普通の生活をしていると健康を害するのではという不安や強迫観念を助長します。それよりも、こだわりすぎず、いろいろなものをバランスよく食べるのが重要なんです」
健康食品こそがもっとも不健康――。
こう聞けばあなたはどう思うだろうか? 昨年4月から始まった「機能性表示食品」制度で新たに種類が増えた「保健機能食品」(特定保健用食品=トクホ、栄養機能食品、機能性表示食品)。医薬品のようなパッケージのサプリメントを含むこれらは、「健康にいいもの」という認識で社会に広まっている。
しかし、こんな健康食品こそが不健康だと書かれた本が出版された。
『
「こだわりの食生活」のほうがむしろ危険!?
『「健康食品」のことがよくわかる本』 巷に氾濫する「いわゆる健康食品」とともに、その真実を暴く。 |
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