五輪観戦旅行の際、妊婦は特に要注意!ブラジルではジカ熱が猛威を振るうも医療が壊滅的状態

photo by James Gathany on CDC(Public Domain)

 オリンピックを8月に控えたブラジルでは、現在経済が深刻な状況になりつつある。  そうした財政難を受けて、1月22日配信の記事では、ブラジルの医療サービスが壊滅的な状況にあり、医師連合会のトップが匙を投げたことを報じた。(参照:「医師連合会トップが匙を投げた!五輪開催地ブラジルの医療事情が危険水域に」)  しかし、そんな医療サービスの壊滅的状況に追い打ちをかけるような厄介な難題が浮上している。  それは、「ジカ熱」である。このジカ熱が、もはやパンデミックの発生と捉えても良いほどにブラジル、そして周辺諸国で猛威を振い始めているのだ。

症状は軽いが胎児に先天性異常を引き起こすリスク

 ネッタイシマカに刺されることで感染するジカ熱はエボラ出血熱と異なり死に至る脅威はない。症状も微熱、皮膚の発疹、関節痛、眼球結膜炎などを引き起こす程度で、感染しても8割は発症しないとも言われている。  しかし、危険なのは妊婦が感染すると小頭症の赤ちゃんが誕生する可能性があると指摘されていることだ。その為、妊婦にはジカ熱の感染が起きている地域への旅行を避けるように世界保健機関(WHO)が呼びかけている。感染が拡大しているブラジルでは<2015年には小頭症の赤ちゃんが誕生するというケースが2782件あったという。2013年は167件、2014年は147件であったのに比較して急激な増加>である。(参照「cuartopoder」)  そして、厄介なのは、このジカ熱、現在まで有効なワクチンも薬も存在しないのだ。  ブラジル政府は事の重大さを憂慮して<2万人の軍隊を動員して市街などネッタイシマカの駆除の為の消毒薬を噴霧をしている>という。またルセフ大統領はオバマ大統領との1月29日の電話会談で米国の協力を要請したという。米国もこの感染から逃れることが出来ないとされているのだ。北米とラテンアメリカの中で、唯一感染から逃れることが出来るのはカナダとチリだとされている。カナダは気候風土の関係からネッタイシマカが棲息していない。チリはアンデス山脈とアタカマ砂漠がネッタイシマカの同国への侵入を妨げているのだ。
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4000人の新生児が小頭症の疑いも
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