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「もし病気になったら、ここでの治療は難しい」
世界の主要メディアの記者陣を前にこう答えたのは、今年8月のオリンピック開催地ブラジルのリオデジャネイロの医師連合会のホルヘ・ダルゼ会長。リオデジャネイロ州は現在140億レアル(4060億円)の財政赤字を抱え1650万人の州民の日常生活に支障をきたしているのである(参照:「
El Confidencial」)。
リオデジャネイロに開催が決まった時はブラジルは飛ぶ鳥も落とす勢いで経済成長していた。しかし、現在のブラジルは原油安、自然鉱物や穀物の輸出減と財政赤字を抱え極度の経済低迷にある。2015年のGDPはマイナス3.7%、インフレ10.67%で、同年のブラジル通貨レアルは対ドル32.9%の値下げになったという。そして、今年の成長もマイナス3%、失業率は10%が予測されているという。
財政難で最も影響を受けているのが公衆衛生部門だ。昨年末にはデングウイルスとジカウイルスの流行対策として緊急に3億8700万レアル(112億円)の救援補助金を受けねばならないという事態が生じたという。同州の12の病院ではベッドの数は50%削減され、緊急患者も重体の場合だけ応急処置をするだけになっている。
前出の「
El Confidencial」が報じたところによれば、デングウイルスに感染したスラム街に住むマルセラさんは3つの病院に行かねばならないハメになった。
最初の病院では長時間待たされた後に看護婦が来て、時間に追われているかのように彼女の体温を急ぎはやに計ったところ、熱は37度と少々と出た。看護婦は緊急の治療は必要ないとして帰宅するように彼女に伝えたという。
その対応に不満を伝える程の力もなく困憊していた彼女は2つ目の病院に行った。すると同じような応急処置をしようとしたので、しっかり体温を計ってくれるように依頼したという。熱は39度8分と出た。その後、2時間待たされたあげく如何なる検査をすることもなく、薬もくれなかった。何故なら必要な薬を切らしているからだという。
3番目の病院に行った。ロシーニャというスラム街にある病院だった。ひとりの医師が同情するかのように検査をしてくれた。その結果は血小板数は7万個で内出血する寸前であったという。それでも、帰宅を告げられた。何故なら、彼女を療養させる場所が無いからだといわれたそうだ。