もはやブームは終了? アナログレコードの復活は本物だった
2015.05.15
世界的にアナログレコードの良さが見直されつつあるなか、日本でも同様の動きがあることは、ハーバー・ビジネス・オンラインでも今年2月に公開した「【アナログレコード復活の舞台裏】単なるブームじゃない!?」でお伝えした通りだが、その復活ぶりはさらに本格化しているようだ。
世界の音楽業界団体である「国際レコード産業連盟(IFPI)」が先月発表したデータによると、2014年のアナログレコードの売上は世界で3億4680万ドルで、前年比54.7%増となった。
売上規模で最大市場である米国の売上は1億8160万ドルで、前年比52.8%増。2位のドイツは3400万ドルで33.4%増、3位のイギリスは3170万ドルで60.1%増と軒並み増えている。
日本は4位で1630万ドル。米国と比較すると市場規模は遙かに小さいが、81.4%増と大きな伸びを見せている。音楽市場全体でみると、アナログレコード市場はわずか2%程度のようだが、それでも、日本を含め、世界中でアナログレコード市場は確実に伸び続けていると言ってよさそうだ。
音にこだわるアーティストたちも世界中でアナログレコードをリリースしているが、日本でも同様の動きが続いている。
“和製ジャミロクワイ”と言われる横浜ストリート発の4人グループ「Suchmos」が6月に7インチレコードを数量限定リリース予定。
その他にも、福山雅治が23年間続けたニッポン放送のラジオ番組の弾き語り名物コーナー「魂のリクエスト」をCD化した「魂リク」のアナログレコードを、実際の音に近い状態で聞いて欲しいとの想いから完全受注生産で同じく6月にリリースするという。
そんななか、毎年4月の第三土曜日に開催されている米国発のアナログレコードムーブメント「レコードストアデイ」が日本でも開催されてさらなる盛り上がりを見せたが、その前日となる4月17日夜には、また別のアナログレコードのイベント「Record People meeting」(rpm)が、渋谷で開催された。
このイベントを主催した日本唯一のアナログレコードのプレス工場を持つ東洋化成のレコード事業部・小林美憲氏はこう語る。
「レコードストアデイは、基本的にはレコードを売るお店とレコード購入者を中心としたイベント。今回開催したrpmは、レコードの作り手側にも多く加わっていただくためのイベントなんです。アーティストはもちろんのこと、ジャケットを作る業者やレーベル、私どものようなプレスをする会社の他、レコードプレーヤーのメーカーも含めて参加いただく。こういったレコードに関わるすべての人たちが集まるイベントというのは、今までありそうでなかったので、新たに場を設けたいということで始めることになりました」
同イベントは今回、プレイベントといった形で行われたものだ。今年の11月3日の文化の日は「レコードの日」でもあることから、レコードストアデイとはまた違った赴きのアナログレコードイベントが本格的に開催される予定だという。
「レコードというのは、これまでにも50~60代の方には安定して買っていただいていたのですが、それに加えて若い方たちにも、もっとレコードの魅力をアピールしていきたいと考えています。お陰様で音楽専門ではない媒体に取り上げていただく機会も飛躍的に増えてきて、取材やイベントなどでお声がけいただく機会も増えてきました。レコードの魅力を知っていただく活動はかなりやりやすくなってきましたが、私どもはあくまでもレコードのプレスメーカーであって、言うなれば町工場。私たち自身からはそんなにいい智恵が出るわけでもないので、レコードに関わる方たちに多く集まっていただき、アイデアをいただいていい方向性を見出しながら、一緒にアナログレコード文化を盛り上げていきたいと思っています」(小林氏)
イベントでは、日本有数のレコード蒐集家としても知られる『洋楽日本盤のレコードデザイン』の著者・植村和紀氏プロデュースによるレコードジャケット展示のほか、同氏と東洋化成の若手女子社員によるレコードジャケットの魅力を語るトークライブも開催。その他にも、レコードを愛する若手ミュージシャンのトークとライブあり、DJタイムありと盛りだくさんの内容で、300人近い参加者で賑わった。
⇒【後編】へ続く アナログレコード文化の今後は? http://hbol.jp/40103
<取材/文 國尾一樹>
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