ロンドン再封鎖15週目。肥満やペットに現れ出したニューノーマル社会の歪み<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

今や英国より酷い日本の感染状況

行きつけ総合病院

行きつけ総合病院。いまコロナ患者が入院中か否かは知らないけれど、やはり多少の恐怖感は否めない。インドやブラジルの現状、いやたった4ヶ月前の英国が嘘のように静かな風景

 4月24日、英国のコロナによる死者は32人でした。同じ日、日本での死者が54人と発表されていますからもう大差はありません。新規感染者に至っては2061人で、5606人の日本の半分以下。大差どころか、日本のほうがずっとヤバイのです。  そりゃあ累計の死者数は12万7千人を超えているわけですから褒められたもんではありません。けれど日本が無策のまま無理やりオリンピック・パラリンピックを開催したり、補償を渋って付け焼刃の対策を繰り返していたら、そのうち抜いちゃうかもしれませんね。亡くなられた方はまだ1万人弱なのに、こちらから見ていると、なんだか日本はひどく疲弊しているように見えます。  しかし最も深刻なのは4万8197人と、一日で2千人もの患者が扉を叩いた病院の入院者数でしょう。英国は前日から104人減って1781人。もはや桁が違います。こうなると死亡率の低さという本来なら喜ぶべき日本人の特質が抜本的対策の抑止力になってしまっているのではないか。  むろん日本より悲惨なシチュエーションにのたうち回っている国もあります。今週のこちらでのトップニュースは連日インドの暗澹たるコロナ禍を取り上げたものでした。完全に医療崩壊しているうえにウイルスの二重ミューテーションが確認された新たな変異株の出現でもう見ていられません。だって一日に新規感染者が33万人ですよ!  死者は2263人ですが、病院の床や廊下に横たわってただ死を待つばかりの病人が何万人もいると報道されています。重体化したコロナ患者の頼みの綱である酸素ボンベが底をついており、ボンベ持参で来てももはや供給口が足りないのでどうしようもないとか。一日に27万人が感染し、死者1600人を数え、さすがにピークだろうと言われていたのがたった5日前。19日のことでした(*BBC)。

インドの油断がまねいた惨状

 先日検査のために訪れたロンドンの病院をわたしは思い出します。ひんやりとした静寂がそこにはありました。見渡せばそれなりに人はいたのですがマスクのせいか無駄話を控えているからか付き添いを絞っているゆえか息詰まる感じがない。リラックスしています。ここも1月にはさほどインドと変わらぬ狂騒だったはず。にわかには信じ難いですが。  昨年の9月、10万人近くあった感染者が2月中旬には1万強にまで減少し、死者も100人を割ったインドは、コロナに勝利した! という気運に溢れていたといいます。いや、もしかしてそこで兜の尾を〆なおしていれば本当にVサインを掲げられたかもしれません。しかしそこで彼らは油断しました。  まず浮かれた気分そのままに5州が主要選挙を実施。選挙運動ではマスク着用や社会的距離などの感染防止対策はほぼ取られませんでした。また3月中旬にはクリケットの大会が開催。人気カードのインド対イングランドの試合には13万人ものファンが集合。むろん席は完売。マスクは少数派。  3月末になってハッと気づけば第2波が津波のように押し寄せてきていました。22日にはBBCが「過去最悪」と伝えています。インドはアストラ・ゼネカ・ワクチンの生産国なのですが25日には輸出を中断。接種をスタートさせましたが英国並みの絨毯爆撃とはいかない様子。続いて各地でロックダウンが始まりましたが時すでに遅し。津波の比喩そのままに一瞬で世界は変容してしまったのでした。  皮肉でも揶揄でもなく、この最悪のシナリオが、とりわけオリ・パラ後に日本でも再現されないことを心からわたしは祈っています。
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まさかの「パンデミックパピー」
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