我慢を重ねるコロナ禍だからこそささやかな贅沢を<入江敦彦の『足止め喰らい日記』 嫌々乍らReturns>

コロナ禍でささやかな贅沢を

魚屋でプチ贅沢 ちょっと閉塞感がたまらなくなって魚屋さんで爆買い。もちろんオンラインショッピングです。拙著『英国ロックダウン100日日記』にも登場した馴染みの Steve Hatt が「店はなんとか開けてるけど人が少なくて仕入れを控えなきゃなんないのが辛いね。お客さんに悪くてさ」てなことをインスタにあげてたので、ちょっとでもご支援を……という思いも込めて。  袋が届いたときは「こんな嬉しいことはない。わかってくれるよね? スティーヴ・ハットにはいつでも会いに行けるから」(声の出演:古谷徹)てな気持ちになりました。もちろん最大の動機は日本から1ヶ月半の長旅を終えて最高の米と酒が届いてくれたという慶事があったことはいうまでもありません。しかしそれだけなら上等の塩を振るって上等の海苔で巻いたおむすびでもよかったわけで。  FAQなので、ちょっと話はズレますが郵便についての個人的な経験則に基づいたアドバイス。わたしはたぶん一般の皆さんよりも小包を受け取る回数が多いはずです。とくにコロナ禍以降はたくさんのお心遣いが届きます。落手すると中味にかかわらず泣きそうなくらい嬉しいものです。  いまのところ小さなもの薄いものの方が早い。1週間足らずで届いて驚くこともある。輸送便の数が減っているので場所塞ぎは後回しになるのかもしれません。そんなバカなと思われるかもしれませんがそうとしか考えられない。EMSは荷物の在処がトレースできる安心はあるけど時間は全く短縮されないのが今回の米と酒の便で証明されました。  あと、国際ヤマト便やDHLはもっと役立たず。腸煮えそうなエピソードがいくつもありますが個人情報に関係する話なので詳細はいまのところ避けさせていただきます。でも、信じて。普通郵便の普通便がベスト。嘘みたいだけどね。通常小包は決まった配達員さんが持ってきてくれるので顔見知りになると箱の扱いも自然と丁寧になるし。

ハラにハレを納める必要性

ハラにハレ 閑話休題。ともあれわたしはそのときたまらなくハラにハレを納めたかったのでした。一日1800人を数える死者が出て、累計で犠牲者は10万人を越えました。腹の底でイカの墨のようにどす黒いものが渦巻いているのが判ります。こういうものはお釈迦様でも草津の湯でも、カッコントーでも治まりません。ハレの味覚だけが特効薬だと信じています。  とにかく白米を赤いもので戴きたかった。おめでたい、からではありません。それがハレの色合わせだからです。赤いだけなら梅干しでもいいんだけれど精進でなく一献を嫋々(じょうじょう)とちょうだいできる陽気に旨いものが喰いたかった。  むろん社会がこんなときに不謹慎だ! てな糾弾も聞こえてきます。が、すでに毎日がケの情報でおなかいっぱいいっぱいなんですよね。陰陽は和合してこそ健全な生活が送れるというもの。陰を貯めこんで陰々となったら滅々は目前。挙句は不謹慎厨と呼ばれるようなあさましい人間になってしまうのです。  なにもパーティしろってんじゃない。ただ、こんなときこそハレを有難く味わって腹中のケを中和してやらねば。
次のページ
ガーディアン紙で見た「気付き」の多い記事
1
2
3