「お母さんの世話をするために家にいなさい」…ストレスで鬱になった「ヤングケアラー」

「あなたがお母さんの責任を持つんだよ」と言われて育った

杏璃さん(仮名)

杏璃さん(仮名)

 「あなたがお母さんの責任を持つんだよ」。杏璃さん(仮名・39歳)は物心ついた頃から日常的にそう言い聞かされて育ってきた。杏璃さんの母親は左耳難聴と心臓疾患に加え、双極性障害の診断も受けている。特に心臓疾患のせいでいつ倒れるかわからず、身障者手帳1級の「疾患により日常生活が著しく制限される」に該当する状態だ。  杏璃さんはそんな母親の「ケアラー」としての役割を期待されて育ってきた。

「ヤングケアラー」とは

 「ケアラー」とは、心身に不調がある人のことを無償でケアする人のことを指す。仕事で介護や看病を行うのではなく、家族や近親者、友人など「無償」で世話をする人を指す言葉だ。特に18歳未満を「ヤングケアラー」、30歳以下を「若年ケアラー」と呼ぶ。  物心ついたときから、母親の看病を担ってきた杏璃さんもまさに「ヤングケアラー」だったといえるだろう。  家族が障がいや病気を抱えている場合、誰かが面倒を見るのは仕方がないことだと考える人もいるかもしれない。しかし幼い頃から「ケアラー」の役割を担っていると、学業の時間を充分に確保できない、部活動に打ち込めない、その結果友人関係を築けないといった問題が生まれる。  杏璃さんの場合、「ケアラー」を強制されるストレスから鬱を発症し、大学を中退。現在も不調を抱えているという。
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祖父母から「ケアラー」の役割を負わされて
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