「お母さんの世話をするために家にいなさい」…ストレスで鬱になった「ヤングケアラー」

福祉や支援につなげてほしかった

 自身の経験を踏まえて今後あったら良いと考える対策はあるか。筆者の質問に杏璃さんはこう答えた。  「学校や周囲の大人には『家族のことだから自分で頑張ってね』と突き放すんじゃなくて、福祉や支援につながるようにしてほしかった。また、いじめやデートDV、虐待などのSOSポスターは学校や地域で見かけるけれどヤングケアラーの相談ポスターは見たことがない。悩んでいる子どもたちに、これは人に相談していい問題なんですよ、ここで対応してもらえますよと知ってもらえれば少しでも変わるのではないか」  最後に、杏璃さんは当時の経験でいまも苦しんでいる側面があり、ヤング・若年ケアラーが後から30代や40代になってから悩みを相談できる場所がほしいと語る。 「結婚した妹家族に介護をバトンタッチすることができました。その後、看護師免許を取ったのですが、本当に自分が取得したいと思って取ったのかと今でも自分の気持ちが不安になります。なぜ自分は看護師を選んだのか。今でも母の介護をしなければとどこかで思い続けているのではないか。本当は私は何がしたいのか……」  杏璃さんは現在、看護師の仕事をやめてデリバリーヘルスで働いている。自分の人生を生きている気持ちがしないという人生の根幹に関わるような悩みの恐ろしさはどれほどのものだろうか。 <取材・文/髙瀬詩穂美>
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