最後にIHMEによる評価と予測が2021/03/25に3月最後の更新されましたのでご紹介します。
IHMEによる日本における真の日毎新規感染者数の推測と予測(人,線形,感染発生日)2020/08/01〜2021/07/01/網目部分は、95%不確実性区間(信頼区間)/赤破線:より悪いシナリオ、紫破線:現状維持、緑破線:全員マスク着用/IHME
IHMEは、2021/03/25更新の予測において、本邦は2021/03/22に感染発生のピークとなり、その後、第四波エピデミックは収束に向かうことで7/1には、昨年10月半ばまでの水準になると示しています。
IHMEは、感染発生日(ウィルスへの曝露日)で真の日毎新規感染者数の評価と予測をしていますので実際の日毎新規感染者の統計に対して平均して14日先行します。
従ってIHMEによる3/25更新の予測に従えば、本邦の第四波エピデミックにおける日毎新規感染者数は、4/8頃にピークとなり、その後収束に向かうという事になります。
IHMEによる日本における日毎死亡者数の実績と予測(人,線形)2020/08/01〜2021/07/01/網目部分は、95%不確実性区間(信頼区間)/赤破線:より悪いシナリオ、紫破線:現状維持、緑破線:全員マスク着用/IHME
日毎死亡者数についてIHMEは、4/8にピークとなり、その後はゆっくりと収束に向かいますが、7/1時点で27人の死亡と高止まりする予測しています。
死亡は、発症日から平均18日後であり発症日は、感染発生日から平均5日後となります。結果として、死亡日のピークは、感染発生日の約23日後となりますので、3/22の感染ピークであるなら4/14が死亡数のピークとなりますので、予測のピークは、1週間早すぎることになります。
IHMEによる日本における累計死亡者数の推測と予測(人,線形)2020/08/01〜2021/07/01/網目部分は、95%不確実性区間(信頼区間)/赤破線:より悪いシナリオ、紫破線:現状維持、緑破線:全員マスク着用/IHME
累計死亡者数についてIHMEは、
死亡数は増加を続け、7/1時点で累計13568人が死亡すると予測しています。2021/03/28現在で本邦での死者数は9050人ですので、次の3ヶ月間で約4500人が死亡するとIHMEは予測しています。
IHMEによる日本における社会的距離の評価と予測(%,線形)2020/02/08〜2021/07/01/赤破線:より悪いシナリオ、紫破線:現状維持、緑破線:全員マスク着用/IHME
移動傾向についてIHMEは、1/10に2021年の最小値である-34%であり、その後は漸増して3/9に-25%迄増えた上で悪い予測では漸増を続けると予測しています。現状維持と全員マスク着用シナリオでは、-26%の移動傾向を維持すると想定しています。
ここまで見ると、本邦の第四波エピデミックは、4月中旬以降収束に向かい、その規模も第三波エピデミック(秋の波)に及ばないと言うことになります。これは
3/6に発表された3月期冒頭の予測と比較すると大幅な下方修正と言えます。これが事実とすると、たいへんにありがたいことですがそうなのでしょうか?
筆者は、現在のIHMEによる本邦に関する予測は、誤りと考えています。理由は簡単で、IHMEは、最近の日本政府による愚行を予測できなかったためです。
過去の記事で指摘してきたようにIHMEは、傾向(トレンド)の大きな変化には、予測の基礎となるデータの取り扱い上、2〜3週間程度遅延する癖があります。
またこれはIHMEだけではありませんが、この手の予測モデルは、
理屈ではありえない人間の愚行を予測できません。わかりやすい事例が昨年6月から日米で見られた第二波エピデミックです。今回は、第四波エピデミックが深刻化する中での3/21の緊急事態宣言解除がそれに該当します。また宮城県などに見られる感染状況悪化の中でのGo To Eat再開も該当します。
このことについては既に過去記事で述べていますのでそちらをお読みください*。
〈*
愚かな為政者の失政は、優れた専門家集団の統計も予測もぶっ潰す 2020/09/30 牧田寛|HBOL〉
一方で、Googleによる予測がたいへんに悲観的な予測を出したことで話題となっています*。Googleは、統計のAI自動学習による予測ですので、統計のトレンド変化には比較的早く反応出来るのだと考えられます。これは既に予測更新を取りやめて久しいですが、
YYG(Youyang Gu) によるAI自動学習を用いた独創的な予測にも見られました。
〈*
報道ステーション2021/03/26〉
但し、
Googleによる予測は、未だに完成度が低いと筆者は考えているために筆者は現時点では採用せず、参考に留めています。
現時点でIHMEによる予測と実測値を比較しますと、3/28の時点で日毎新規感染者数の実測値は、倍加時間25日前後で増加中であるため、相当する3/14時点でのIHMEによる真の日毎新規感染者数の増加率は著しい過小評価となっています。また3/28時点で日毎新規感染者数の増加率は更に上昇する傾向にありますので、IHMEによる3月中旬以降の変化予測は明らかに過小評価となっています。
次にIHMEによる日毎死者数の予測は、3/21からの増加に転じるのですが、実際の統計は、6日後の3/27から増加に転じています。但し日数については、実測値には7日移動平均による遅延があり、予測も誤差が大きいため、IHMEがやや過早であるという評価で良いと思います。
IHMEによる予測にとって比較的重要な変数である総移動傾向についてみます。現実には、2月中の各自治体によるGo To Eatの再開や、3/21以降の関東での市民による外食の活発化が大きく、福島県沖地震の影響などだけでなく移動傾向の実測値との比較からも、IHMEは、2月から3月上旬の総移動傾向を過小評価、とりわけ3月下旬の総移動傾向を大きく過小評価していると考えられます。
従ってたいへんに残念なことですが、現時点でIHMEの日本についての予測は、第一に3/21の緊急事態宣言解除による強い感染増の圧力を現時点で予測に取り入れておらず、第二に2月以降各地で解除された緊急事態宣言やGo To EATの再開、震災の影響などを十分に予測に取り入れていないと考えられます。IHMEがこのような人間による愚行や天災による突然のトレンドの変化を予測に取り入れるにはこれまでの経験上2〜3週間程度を要します。したがって、4/2、4/8に更新される四月期の予測で現在のトレンドへ対応する修正がなされると筆者は考えています。
このようにIHMEの予測が人間(政権)の愚行とそれに続く大きなトレンドの変化に追従できず過小評価となった事は、合衆国での第二波、本邦と韓国での第三波でも顕著に生じていますので、今回の第四波でも同じ事が生じたと筆者は考えています。
IHMEと同様に筆者が重視している LANL(ロスアラモス国立研究所)独自の
LANL-Growth Rate Modelによる短期・中期予測では、この先6週間、本邦における感染者数と死亡者数の増加は衰えませんので、4月いっぱいまでは、7〜13万人程度の新規感染者が、1000〜2000人程度の新たな死者が増加することは覚悟しておくべきでしょう。
LANLによるこの先6週間の累計新規感染者数の予測2021/03/28予測/LANL
LANLによるこの先6週間の累計死亡者数の予測2021/03/28予測/LANL
IHMEの予測については一番ハズレになる条件で月末を迎えたためにかなり歯切れの悪い事になりましたが、今週末ないし来週末には予測が新しいトレンドに最適化されますので、その際にまたご紹介します。
今回はここまでですが、次回はずっと後送りにしてきた本邦統計の異常についての問題提起を予定しています。そのあとは、統計の最新情報と全く別の原子力か鉄道の話題を並行させようと考えています。
◆コロラド博士の「私はこの分野は専門外なのですが」新型コロナ感染症シリーズ46:第四波エピデミック(6)
<文/牧田寛>
Twitter ID:
@BB45_Colorado
まきた ひろし●著述家・工学博士。徳島大学助手を経て高知工科大学助教、元コロラド大学コロラドスプリングス校客員教授。勤務先大学との関係が著しく悪化し心身を痛めた後解雇。1年半の沈黙の後著述家として再起。本来の専門は、分子反応論、錯体化学、鉱物化学、ワイドギャップ半導体だが、原子力及び核、軍事については、独自に調査・取材を進めてきた。原発問題について、そして2020年4月からは新型コロナウィルス・パンデミックについての
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