3月9日の銀座。このあと、緊急事態宣言の緩みか人出も増え始めた。 photo by Ned Snowman / Shutterstock.com
ここまで本邦では、既に
第四波エピデミックの渦中にあるということを
統計と
保健指標評価研究所(IHME)などによる予測と評価をもとに論じてきました。本邦のエピデミックを論じる際に、筆者は本邦の統計は質が低い、おかしな挙動をしているという事を常に指摘してきました。
その中でとくに
第三波エピデミック以降、死亡者数統計の挙動が極めておかしい、ありえないと指摘してきています。筆者は、死亡者数統計がおかしいのか、新規感染者数統計がおかしいのかについてはここまで言及してきませんでしたが、第四波エピデミックの統計からの分析をする上で、事実として本邦統計の異常を簡単な数字で説明出来るようになりました。
今回は、元々台湾におけるエピデミックについて統計とIHMEによる評価と予測を用いてご紹介する予定でしたが、本邦の統計についての問題点を知っておかねば二国間、多国間比較はできません。そこで、今回は、本邦統計の異常を論じる前に2021/03/14現在の本邦、韓国、台湾の統計を比較し、現状の解説と統計の異常についての指摘を行います。その上で次回、本邦統計の異常を論じます。
なお筆者は、統計の異常について現在分かる範囲で指摘しますが、「政府が統計を誤魔化している。」というような拙速な結論を主張することはしません。
エピデミックに対応する上で最も重要な統計が本邦では、メイキングを含む何らかの理由で大きく歪んでおり、状況判断を著しく歪め、結果として政策判断を大きく歪めている、索敵として失敗しているという事実を指摘した上で、その原因究明と正常化を求めるものです。
現在本邦は、
ウィルスに対しかつての大戦における捷一号作戦と酷似した推移と理由で、かつてと同様に壊滅的敗北を喫しようとしています。
まず、本邦、韓国、台湾およびアジア全体*について現状を統計で見て行きます。ここから先、大量の図表を用いますが、基本的にそれぞれの原典図表にリンクしています。リンク先には同じ図表の最新版がありますので、ご自身で原典図表を閲覧の上で様々な操作ができます。原典は、多くが
Our World In DATA(OWID) で、原典データは、
Johns Hopkins University(JHU)です。JHUの本邦情報原典は、
厚生労働省(厚労省)のオープンデータです。
〈*アジアとは、ウラル山脈、黒海、ボスポラス海峡、紅海以東を示す。但し、OWIDでは、ロシア領を欧州に、トルコ領をアジアとしている〉
今回から、最新情報に重点を置き、
前回までに言及したことはできるだけ簡略化します。従って、前回までに言及したことは
バックナンバーをお読みください。
まず
日毎新規感染者数です。7日移動平均とRaw DATA*を示しています。また、各国、地域間の比較をするために、100万人あたりの新規感染者数を用いています。その為単位はppm(ピーピーエム、百万分率)となります。
〈*Raw DATA=生データをそのままグラフ化したもので、曜日変動などが現れるために読み取りにくいが、ありのままを見ることができる。7日移動平均は、見やすいが、数日の遅延が生じるほか見落とす情報も多い〉
日本、韓国、台湾、アジア全体における百万人あたりの日毎新規感染者数の推移(ppm,線形,7日移動平均)2020/09/01-2021/03/14/ 日本と韓国、台湾における100万人あたり日毎新規感染者数の推移(ppm, Raw Data,線形)2020/09/01-2021/03/14/OWID
本邦、韓国、アジア全体全てで秋の波(日韓における第三波)は、9月から10月にかけて始まっていますが、アジア全体、韓国、本邦の順に12月から2月にかけて一応収束しています。但し、全てでBaselineが大幅に上昇して今回の非季節性パンデミック(日韓における第四波)を迎えています。
今回の非季節性パンデミック(日韓における第四波)は、アジア全体では2月中旬に、本邦と韓国では、3月上旬に立ち上がりが見られます。
アジア全域は、既に冬が終わっており、春から雨期、夏へと向かいますので本来呼吸器疾患を主たる症状とし、
エアロゾル感染*が大きな感染経路であるCOVID-19は、本来この時点でパンデミックを起こしにくくなる季節です。それにもかかわらず通常と異なりインフルエンザを根絶する寸前まで感染防御を高めている各国で非季節性のエピデミックが立ち上がりつつあります。
〈*「エアロゾル感染」を邦訳すると「空気感染」が近い訳であるが、本邦では「空気感染」は狂信的教条主義者による完全に無意味な教条主義論争となるので、筆者は「エアロゾル感染」を用いている。なお
本邦のみで蔓延る「マイクロ飛沫感染」は本邦教条主義者による誤った政治的造語=嘘である。合衆国疾病予防管理センター(CDC)を筆頭として世界では、既に昨年9月よりCOVID-19をエアロゾル感染として強く警戒しており、対策も飛沫でなくエアロゾル対策となっている。飛沫感染としての対策に教条主義的に固執した結果、本邦は、
Go To Eat Pointで取り返しのつかない大失敗をした〉
このエピデミックは、英国で昨年9月に発見されたB.1.1.7(英国変異株)によるものとされ、昨年11月から英国を筆頭として欧州で猛威を振るい、現在全世界に拡散しています。欧州でもイタリアで2月からエピデミックの鋭い立ち上がりをみせており、既にロックダウンが始まっています*。
〈*
イタリア、半数の州で新たにロックダウン 復活祭には全国が対象2021/03/14 CNN〉
イタリアにおけるB.1.1.7による非季節性エピデミックは、秋の波=季節性エピデミックが収束過程で下げ止まってしまい、高いBaselineを1〜2ヶ月維持した後に立ち上がっており、本邦と韓国では、二の舞とならぬように厳戒せねばなりません。
イタリア、イラン、インド、日本、台湾、欧州、アジア全体における百万人あたりの日毎新規感染者数の推移(ppm,線形,7日移動平均)2020/09/01-2021/03/14/OWID
図示するようにイタリア、イラン、インド、日本、台湾、欧州、アジア全体における百万人あたりの日毎新規感染者数の推移を見ますと、欧州では既にB.1.1.7による非季節性エピデミックが発生しており、アジアでも中東湾岸諸国、インド、日本など全域で今年に入りエピデミックが始まっています。
東部アジア・大洋州諸国は謎々効果*(Factor X)によって感染者数が少なくなっていますが、波形そのものは欧州と連動しています。
〈*モンゴル、中国、ミャンマー以東の東部アジア、大洋州ではCOVID-19パンデミックによる被害が他の地域、特に米欧に比してきわめて小さい。また、その西側でもアフガニスタンまでは日韓並みの感染率である。中東湾岸諸国から謎々効果は、急速に衰えて行く〉
筆者はこの事実に2020年2月末頃に気がつき、同3月には「謎々効果」(謎々ボーナスタイム)と名付けている。全く同じ現象を後に”Factor X”と呼称している人たちもいる。米欧メディアや研究機関が注目するものの、謎々効果の原因もそれがどのような現象であるかも不明であった。謎々効果の原因は依然不明だが、この領域では、感染率が現在でもBaseline比較で台湾、ニュージーランドなどでは欧米比1/1000〜1/10000であり、日韓で1/10〜1/20である。
一方で致命率(CFR)は、謎々効果があっても米欧他と大きな差はない。感染すれば、謎々効果国であっても一定数死亡し、その確率であるCFRは米欧とそれほど大きく変わらない。CFRは、主として医療水準と医療への負荷によって変動している。
謎々効果は、アフリカ大陸でもほぼ全域で見られている。視点を変えると、COVID-19は、欧州、南北米大陸で特異的に猛威を振るっていると考えることができる〉