一斉休校で仕事を休む母親たち。休校助成金の活用求め政治を動かす

出勤した社員と不公平?

 その上で会社側からは、「勤務した職員と不公平」との反論がある。出勤した職員からも「仕事の負担が増えた」との声が上がっているという。しかしこの点で考えてほしいのは、休んだ職員は好きで休んだわけではなく、政府の一斉休校によって「休まざるを得なかった」ということだ。小学校低学年の子どもや未就学児・乳幼児を家に一人にして出勤できるだろうか。  三菱UFJリサーチ&コンサルティングによる「全国1万人調査 『緊急事態宣言下における日本人の行動変容』」には、「臨時休校や、通園・通学の自粛等の間、親が通常仕事をしている日中の子どもの過ごし方」との設問がある。  そこで「子どもだけで過ごしている」との回答は、「未就学児(3歳~就学前)」が10.4%、「乳幼児(0歳~2歳)」は3.8%となっている。大多数は回答者本人や配偶者・パートナーが仕事を調整して子どもの面倒を見ているのだ。子どもの預け先がなければ保護者が仕事を調整するしかない。すなわち休業するしかないということだ。  休校助成金制度を活用したら、会社の負担なしに休んだ職員の給料は補償できる。出勤した職員の負担が増えた点を考慮するのであれば、「休まざるを得なかった」職員の給料をカットするのではなく、会社として出勤した職員の負担をどのように補償するかを別途検討すべきだ。

「法律違反ではない」

 しかし組合がこのように団体交渉で提案しても話がこじれてしまうことがある。会社側は「これ以上は会社の制度の問題なので会社で決める」「法律違反をしているわけではない」と言って態度を硬化させてしまう。こじれるのには理由がある。休校助成金の活用は会社にとって義務ではないためだ。  そもそも労働契約上で欠勤の取り扱いは、「会社都合欠勤」と「自己都合欠勤」しかない。現行制度で欠勤した際の休業補償は、「会社都合欠勤」にしか適用されない。雇用調整助成金や休業支援金は「会社(事業主)都合」で欠勤させた場合の休業補償となっている。従って、一斉休校に伴う労働者の休業は、「自己都合欠勤」となり、会社側には「自己都合欠勤」を積極的に補償する義務はない。  このため、さっぽろ青年ユニオン(北海道札幌市を中心に活動する労働組合)では休校助成金に関する2件の団体交渉が決裂したという。コールセンター最大手の大企業は制度を十分に利用せず、休業した労働者は減収となった。アパレル某社は制度自体を全く活用せず、休業した労働者は減収となり、子どもの習い事も断念せざるを得ない状況に追い込まれた。
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休校による休業は「政府都合欠勤」
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