わたしの住むエリアが感染指数の優等生から一転した理由も明快になった。第一封鎖時はコミュニティの相互扶助により悲劇を免れ、二度目はその親密さゆえ悲劇を招いたのだ。
2月17日のガーディアン紙(掲載は翌18日)に政府の公式解析チームJoint Biosecurity Center(JBC)による
機密分析の未発表政府報告書リーク記事がありました。本来ならトップに来て然るべき内容ですが、漏洩記事の場合「間違い」を忌避して大見出しを躍らせない品位と自覚がこの新聞にはあります。
かなり早い段階から新型コロナは差別的ウィルスだといわれていました。貧困層がより多く犠牲になっていると。このリポートはそれを数字で立証した内容。それによれば、いくら政府が企業をサポートしても現金収入を失う余裕のない人々は自己隔離せずパンデミックの直接原因となった。さらには220億ポンドのテスト・アンド・トレース計画の失敗がそれに拍車をかけた――という結論に至っています。
もしかしたら、ある意味目新しくない言説かもしれません。ただそれが公式な事実として認められたのは大きな出来事。英国で最も被害が大きかったブラックバーンやレスターでは、自己隔離のための経済的支援を拒否された人が他の地域より頭抜けて高かった事実には、指紋のべったりついた凶器が発見されたようなショックを感じました。
「ああ、コロナ禍は紛れもない人災なのだな」と。
資産がないことの証明は、資産があることを証明するよりも難しい。しかしそんなこといってる場合じゃなかったんですよね。そして、いまでも現在進行形でそんなこといってる場合じゃない。貧困を理由に1日に少なくとも2万人以上が隔離命令に準拠していないというのですから。
先述したビーチ集団と同様にわたしはレイヴやクラビングで大騒ぎしている連中を目の敵にしていました。けれど褒められたもんじゃないにせよ、それらの無軌道がパンデミックを加速させているのではなかった。ヘルスケアやソーシャワーカー、バスやタクシーの運転手、スーパー店員など公的な役割を担う労働者が被害者であり加害者になっています。
現在英国ではロックダウン規定違反者への厳しい罰金制度を取っています。それは駐車違反のチケットにも似て問答無用。初犯200ポンド。二度目以降は常習者と判断され6,400ポンドという高額を請求されます。30人越え集団の主催者には1万ポンド! でも、現実的にはあんまり意味がないみたいですね。
北風と太陽ではありませんが、パンデミックを抑えようと考えたら経済的な弱者の直接的な援助に行き着いた、というのがJBCレポートの本質です。現在行われている500ポンドのサポートはあまりにも脆弱なんですよ。対象者が限定され過ぎているので。検査で陽性が出た申請者には全員に授与する計画が進行中ですが、なんとか可決されますよう。
このレポートに指摘されるまでもなく現英国内における社会的経済不平等は黒人やアジア人(こちらでアジアンというと東アジア系ではなく主にインド系の人たちを指す)のマイノリティを中心に観察されます。貧困は不衛生に直結していますし、狭い住宅環境で多世帯が共同生活を営めばどうしてもコロナに狙われやすくなる。
これはとても重要なことだと思うんですが、スコットランドやアイルランドはそういった環境に暮らす人たちに向けてどうすれば感染リスクの少ない隔離的生活ができるのかのガイダンスを行っているのです。知恵と工夫でサバイバルする術を発信している。なにやってんだイングランドは!
それからね、マイノリティは民族的なポリシーや独自の価値観、宗教理念などによってワクチンを嫌がる人達がかなりいるんですよね。政府は、それらのワクチン接種に抵抗がある人達に向けてのTVキャンペーンを始めました。それぞれの民族を代表する〝ローカルヒーロー〟たちが出演して〝自分たちの言葉〟で語りかける接種のススメです。