女性蔑視やゴシップ報道に壊された女性アイドル。今なお続く搾取の構図

主体性のある女性から性的対象物に

 どれだけプレッシャーがかかり、プライバシーが侵害されるか認識していながら、赤の他人がテレビで断罪する……。  こういった異常な報道はブリトニーを傷つけただけではない。画面を通して視聴する、多くの少女たちの心にも、見えない傷を負わせていたのだ。  “ソーヤーはインタビュー中、彼女の道徳性に疑問を投げかけ、ブリトニーを感情的にさせた。「ブリトニーの処女性への執着は、男女間の性的なダブルスタンダードを浮き彫りにしていますが、それ以上に、若い女のコへの性的搾取やモノ扱いがメディアやポップ業界の根幹にあることを浮き彫りにしています」とロビンソンは話す。 「そのような状況下では、若い女性が自分自身のセクシュアリティを持ったり、主体性を持ってそれを探求したりする居場所はありません。その代わり、彼女たちは業界や視聴者の大人の男性が、彼女たちを性的対象物にしていることに責任を負うようになるのです」”

日本のアイドル業界はアップデートされているのか

 さて、ここまでお読みいただいて、読者の皆さんは何を感じただろう? たかが15〜20年前とはいえ、人権感覚やメンタルヘルスに対しての意識がここまで違うのかと驚いた方も多いはずだ。  しかし、忘れてはいけないのは、こうした状況が今も根強く残っていることだ。 「当たり前」だと思って、無邪気に楽しんでいるテレビ番組やゴシップ記事など、本当に「違和感」を感じていないだろうか? 中高年向けの雑誌にティーンのアイドルが水着で載っているのは、自然なことなのだろうか?  もし、「おかしいかもしれない」と感じることがあれば、いったい何故そう思うのか、是非考えてみてほしい。  高校時代、筆者は毎日学校の帰りにレコードショップに寄っていくことが日課だった。ちょうど『Greatest Hits: My Prerogative』が発売された時期で、店頭に貼られた汗ばんだブリトニーのセクシーなポスターを、イコンのごとく拝んで帰ったものだ。  遠い日本の高校生にすら、毎日半裸の姿を見られていたブリトニーは、当時何を思っていたのだろう。 <取材・文・訳/林 泰人>
ライター・編集者。日本人の父、ポーランド人の母を持つ。日本語、英語、ポーランド語のトライリンガルで西武ライオンズファン
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