女性蔑視やゴシップ報道に壊された女性アイドル。今なお続く搾取の構図

強烈な女性蔑視に世界が興奮

『フレーミング・ブリトニー・スピアーズ』に関しては、MTVで司会を務めていたデイヴ・ホームズの手記も衝撃的であり、痛ましい。『ロサンゼルス・タイムズ』に掲載された同記事では、ホームズが加害者でもあった自身を振り返っている。(参照:LOS ANGELES TIMES)  “クリスティーナ・アギレラマンディ・ムーアジェシカ・シンプソンなど、ほかにも若い女性ポップスターが王座を争っていたが、誰もが彼女について意見を持っていたのはブリトニーだった。  子どもたちは彼女を愛し、両親は鼻であしらい、タブロイド紙は彼女をストーキングした。彼女のレーベルとMTVはカネを稼いでいた。みんなの目は釘づけになっていた”  “しかし、多くの人が飛びついたのは、別なものだ。それはスピアーズをはじめとする若い女性ポップスターやセレブたちが直面させられた、強烈な女性蔑視だ。これを見逃すわけにはいかない。高校の年鑑写真のように、今では絶対に狂っているように見えるだろう。  私には今の世界がより優しいかはわからない。だが、当時その残酷さは恥ではなかった。私たちがブリトニーに、そしてブリトニーについて、そして彼女を通して世界中の女のコに、話しかけていた様子を見るのは、今の視点から見ると痛々しいものがある”  こうホームズが指摘するように、女性蔑視セレブ文化メディアの過剰な報道によって被害を受けているのはブリトニーだけではない。ほかのアイドルも同様、それどころかこうした光景を目にする少女たちも、間接的に被害を受けていたと言える。

記者からは「処女ですか?」との質問も

 2000年前後の話と聞くと、そう昔には思えないかもしれない。しかし、当時と今では女性の人権やメンタルヘルスの問題について、かなりの違いがある。  “私は『ベイビー・ワン・モア・タイム』のころ、10代のブリトニーが処女かどうか、世間でかなりの憶測が飛び交っていたことを覚えている。記者たちは単刀直入に彼女にそれを聞いていた。自分もそうしていたとは思っていないが、もう一度振り返ってたしかめることは気が引ける。なぜなら、『フレーミング・ブリトニー・スピアーズ』で明らかになっているように、1999年にはそういったことが何気なく行われていたからだ。  ティーンのポップスターとそんな会話をするなんて想像もつかないし、正直誰とでもそんな会話をするなんて想像もつかないが、それを否定できないことが私には耐えられない。ひとつだけたしかなことは、(処女や童貞であるか)ジャスティン・ティンバーレイクについて、持ち上がることはなかっただろうということだ”  インタビュアーがティーンのアイドルに「あなたは処女ですか?」と聞いているとことが、テレビで流れているところを想像してみてほしい。今ではほとんどの人がありえないと感じるだろう。  しかし、程度こそ違えど、同じようなミソジニーは現在でも続いている。  筆者自身も、過去の取材で女性アイドルなどに「どんな男性がタイプですか?」と聞いたことは何度もある。そのたびに「いったい、なぜこんな質問をしなければいけないのか?」と自問していたが、心のなかでは「仕事だから」「上司に言われたから」「読者が知りたいから」と言い訳をしていた。私もブリトニーをハメた一人なのだ。
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記者に人格否定され涙したブリトニー
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