外環道建設中に起きた調布市の陥没事故、資産価値低下を危惧する住民に不誠実な対応のNEXCO東日本

陥没事故の前月からその兆候は現れていた

調布市東つつじヶ丘2丁目の住宅地が陥没

2020年10月18日、調布市東つつじヶ丘2丁目の住宅地が陥没。NEXCO東日本は早急な対応に追われた(写真提供:NEXCO東日本)

 2020年10月18日、東京都調布市東つつじヶ丘2丁目住宅街の生活道路が陥没した。当初から周辺住民は、事故の原因はその地下40m以深で建設中の高速道路「東京外郭環状道路」(以下、外環)に違いないと読んでいた。  外環は千葉県、埼玉県、東京都を円弧状につなぐ高速計画だが、未完成の東京工区(練馬区と世田谷区をむすぶ16km)については大深度(概ね地下40m以深の地下空間)を直径16mという日本最大の巨大掘削機「シールドマシン」が2017年行以降からトンネル建設を進めていた。  前月の9月から、調布市内ではそのトンネル直上と周辺で建物の振動、ゴ・ゴ・ゴという騒音、そして外壁への亀裂、家屋と路面にズレ、門扉のゆがみが生じるなどの被害が起きていた。  地元の住民グループは、これらの被害を外環の事業者(NEXCO東日本、NEXCO中日本、国土交通省)に伝え、工事の中止と説明会の開催を訴えたが、NEXCOは何ら対策を採らなかった。そして10月18日に陥没が起きた。
調布市の市民団体「外環被害住民連絡会・調布」が陥没現場周辺で実施したアンケート結果

調布市の市民団体「外環被害住民連絡会・調布」が陥没現場周辺で実施したアンケート結果。構造物被害が58軒、振動や騒音などの体感的被害は102軒もある

 事故後に結成された調布市の住民団体「外環被害住民連絡会・調布」(以下、連絡会)は、陥没現場周辺で事故の前後に起きていた被害状況のアンケート調査を実施。その報告書によると、構造物被害を受けたのは58軒。内容は、ドアや床の傾きが19件、コンクリートのひび割れが17件等々。体感的被害を受けたのは102軒。内容は騒音95件、騒音72件、低周波音51件となっている。  だからこそ、陥没事故を驚きもせず「やはり起きたか」と受け止める人も少なくなかった。

住民が危惧する「資産価値の下落」について、NEXCO東日本は「仮定の質問には答えられない」

陥没する前の7月に撮影されていた陥没現場(写真提供:NEXCO東日本)

陥没する前の7月に撮影されていた陥没現場(写真提供:NEXCO東日本)

 翌19日。3事業者が事故調査のために立ち上げた「有識者委員会」と、陥没現場の工事を担当していたNEXCO東日本は記者会見を開催。数十人いた記者の多くは、「振動を陥没の予兆ととらえなかったのか」、「未着工区間で、ボーリングなどの追加調査を実施するのか」などの質問に集中していたが、筆者は違う質問をした。 「今回の事故で陥没現場周辺の土地や家屋の資産価値は低下する。中には、将来、家を売ったお金で高齢者施設に入る人もいるのに。資産価値が下がればそれもかなわなくなる。NEXCOは、今回の事故での資産価値下落に対し、その下落分を補償するのか?」  これにNEXCO東日本の職員はこう回答した。 「仮定の質問には答えられません」 「補償する気がないのか?」と筆者は思った。
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NEXCO対応から垣間見える「補償」からの逃げの姿勢
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