「免許を返納しても、タクシー運転手は年上」高齢化が進むタクシー業界の実情

夢を追う若者を積極的に雇用

 高齢化が進むタクシー業界に、’09年、再起をかけ32歳で飛び込み、人生を一発逆転した男がいる。直木賞作家・志茂田景樹の息子であり、武蔵野市議会議員の下田大気氏だ。  リーマンショック後の不況時にもかかわらず、1年目で年収800万円を達成。事業の失敗で、自己破産も経験したが、今ではタクシードライバーと政治家の二足の草鞋を履く。 「正直、タクシードライバーは若者が一生涯する仕事ではないと思います。しかし、夢を追っている若者にはおすすめできる。若者はコロナ前なら月50万円ぐらいは稼げ、自由時間も多い。現在、私はコンドル交通というタクシー会社で働いていますが、そこは役者、芸人、作家になりたい20代、30代の若者を積極的に雇用しています。司法試験の勉強をして弁護士になった人もいますよ」

タクシーは人生再生の最適な舞台

 高齢タクシードライバーについては、どう考えているのか? 「最大手の日本交通は、今年度は新卒200人以上を採用。新卒者だけの営業所もあり、売り上げもトップだと聞きます。若者が増えれば、業界のイメージも変わっていく。  確かに、一日中、車の中なので運動不足になるし、主流の隔日勤務では不摂生な食生活にもなりがち。高齢ドライバーには、糖尿病など持病を抱える人も多い。昔ながらの『飲む・打つ・買う』のドライバーもいます。  それでも、若者だけではなく、60歳を過ぎてからタクシードライバーになって、お金を貯めて、再び事業に挑戦する人もいました。私のように人生を大逆転したい人にはタクシードライバーほど、魅力的な職業はないと思います」  行き先は、それぞれのドライバー次第か。 【山梨大学大学院教授・伊藤安海氏】 専門は安全医工学、法科学、運転リハビリなど。警察庁科学警察研究所では事故の鑑定に携わる。著書は『高齢ドライバー』(文春新書) 【ノンフィクション作家・矢貫 隆氏】 長距離トラック運転手、タクシードライバーなど多数の職業を経て、現職。著書多数。最新作は『いつも鏡を見てる』(集英社) 【武蔵野市議会議員・タクシードライバー・下田大気氏】 数々の事業に失敗し、タクシードライバーに。1年目で年収800万円を達成し、人生が一変。現在は、武蔵野市議会議員(2期目) <取材・文/中山美里(オフィスキング) 村田孔明>
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