叫ばれ続ける女性の自殺者数増加問題。自分を、大切な人を守るためにできること
2020年後半以降、メディアで叫ばれ続けた女性の自殺者数増加問題。背景には経済的理由と、コロナ禍特有のメンタルヘルスの問題があり、秋から冬にかけて襲ったコロナ第3波の影響はこれからだ。自分と隣人のいのちを守るために必要な知識を身につけよう。
依然としてコロナ禍は収束する様子を見せず、社会的不安は増すばかり。厚労省発表の自殺動向資料によれば、10月をピークに11月はやや減少したが、前年比で200人以上多く、自殺者数は高止まりしている。特に若い女性の自殺が多い状況に対して「強い危機感を持っています」と語るのは、日本自殺予防学会理事長の張賢徳氏だ。
「日本で自殺者が急増し、初めて3万人を超えたのは’98年。背景には前年のアジア通貨危機で企業の破綻が相次ぎ、深刻な景気悪化がありました。これが40代から60代の稼ぎ手の男性世代を直撃した。
一方、今回のコロナ禍では影響を受けずに稼げる業界と、飲食店やサービス業など打撃がすさまじい業界とで格差が生じています。飲食・サービス業は女性の非正規雇用が多いので、経済的な打撃は女性により強く影響を与えている可能性がある。この構図は’98年の男性自殺の激増と相似形を成します。
また、コロナ禍では家庭内のストレスも増していて、これもまた男性より女性に強い影響を与えていると思われます」
精神科や心療内科で看護師としての経験があり、’06年から自死遺族支援など自殺予防活動を行う医学博士の髙橋聡美氏は、特に若年層の自殺急増を嘆く。
「当初、私も働き盛りの男性にこそ影響が出ると考えていましたが、実際は女性の自殺が増えた。さらに分析すると男女ともに子供の自殺が急増しており、8月の内訳では女子中学生が前年の4倍、女子高校生は7.3倍という驚くべき事実が明らかになりました」
’06年に制定された自殺対策基本法によって、昨年まで日本の自殺者総数は減少傾向にあった。しかし、こと若年層に至ってはここ数年過去最悪を更新し続けていたことは、あまり知られていない。
「これまで、国の子供に対する自殺予防は有効な対策ができずにきました。今回のコロナ対策でも、真っ先に休校措置が取られましたが、卒業式や入学式がなく、部活動や運動会も縮小。
大人はGo To キャンペーンで旅行が推奨されるのに修学旅行は変更になり、学校生活のやりがいや楽しみがないまま受験や就職活動に突入せざるを得ない。
この状況がいかに若年層の重圧になっているか、我々大人がもっと注意を払わなければなりません。子供のセーフティネットである教育現場が脅かされている対応には憤りを覚えます」
コロナ禍では不況と家庭内ストレスが自殺へと追いやる
男女ともに子供の自殺が急増
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