●4. 2020年5月25日 ジョージ・フロイドの死
新型コロナウイルスと同じように、今年の大きな潮流の1つだ。ジョージ・フロイドの死から噴き出した不満が、Black Lives Matter の盛り上がりとしてアメリカ社会を席巻した(
WIRED.jp)。
アメリカでは人種差別は終わってはおらず、まだ非常に強く残っていることが、この事件を切っ掛けに大きく取り上げられるようになった。そして、アメリカ社会だけでなく世界の国々で、差別についての情報が注目されるようになった。
差別について多くの議論を呼んだこの事件だが、IT業界への影響も大きかった。BLM は、アメリカにいなくても、仕事に影響を与える出来事になった。
ITの中心はアメリカである。その国にあるIT企業の多くが、BLM に対する態度を表明したり、関わる活動を始めたりした。その中には、プログラムの中から差別的な単語を取りのぞくというものもあった。
Black と付いている単語を置き換える、Slave と付いている単語を別のものにする。そのためにプログラムを書きかえて、利用者にも対応を迫る。日本に住んでいても、そうした動きは対岸の火事ではなく、目の前の大騒動というべきものだった。そのためこの1年、BLM から目を離せない年になった。
●5. 2020年6月30日 香港国家安全法案が可決
今年は中国とアメリカの年だったと言っても過言ではないだろう。新型コロナウイルスは、中国で最初の大規模感染が確認された。その中国で、今年の折り返し地点で大きな動きがあった(
日本経済新聞)。
多くの人がもう知っているが、中国はアメリカと並ぶIT大国だ。そして、中国はその技術を積極的に人民支配に利用している。他の国なら、人権侵害として糾弾されるような技術でも、中国なら躊躇なく採用される。その中国の今後の方向を世界に示す動きが、香港国家安全法案の可決だったと言える。
欧米諸国と中国の対比は、顔認識技術が分かりやすい。人権侵害や差別の助長などの理由で取りやめる欧米企業に対して、中国は人民統治のための有用技術として利用を促進している。IT系の技術は、アメリカだけを追っていては最新の動向が見えない。中国に注視しなければ大きな技術革新を見落としてしまう。
技術は、使えば使うほど進化していく。そして中国は、価値観を共有する国に、自国の技術を積極的に売り込んでいる。中国の動向は目が離せない。
●6. 2020年07月16日 藤井聡太七段、史上最年少でタイトル獲得
藤井聡太七段、史上最年少でタイトル獲得のニュースには、IT事業者も大いに沸いた。それは単に、彼が若くして強い棋士だからというだけではない。将棋の研究用のパソコンを自分で組み、コンピューター将棋を利用しているという側面もある。
コンピューターやAIが発達したとき、人類はどのように振る舞うべきなのか。職が奪われる。人権が脅かされる。そうしたネガティブな印象も根強くある。そうした中で、藤井聡太氏は、新しい時代のロールモデルになる人物なのではないかと感じている。
技術の利用の仕方、技術と人生の向き合い方。藤井聡太氏を見ていると学ぶべきことが多い。何よりも人生に対して前向きで明るいのがよい。こうした若い人が出てきて、社会で活躍していく様子は、見ていて楽しい。