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今年も残すところあと少しになった。というわけで昨年に続き、IT業界に身を置く人間として、今年の10大ニュースを私的にまとめてみようと思う。特に順位は付けず、おおむね時系列で並べていく。
しかしまあ当然ながら、今年はほとんどが新型コロナウイルス関係になってしまう。それ以外のものも含めて、順に見ていこう。
● 1. 新型コロナウイルス
2020年2月27日、首相から全国の小中高での一斉臨時休校が要請された(
日本経済新聞)。その後、4月7日に7都府県に
緊急事態宣言が発令され、16日には対象が全国へと拡大された(
日本経済新聞)。全国一斉臨時臨時休校からの流れは、新型コロナウイルスで社会が激変するというまさに象徴的な出来事だった。
社会の構造が変わる瞬間というのは、歴史を見るとさまざまな理由がある。戦争、支配者の変更、災害、疫病などがある。今回のような大型の感染症による変化は、前々から予想されていた。パンデミックの危険は叫ばれていたし、人類は過去に多くの疫病に蹂躙されてきた。
今回の新型コロナウイルスでは、人の接触を減らせば蔓延をとめられることが早期に分かった。そして、人々は社会生活の方式を急激に変化させる必要に迫られた。これまでおこなっていた、多人数を各地から集めて労働させるというやり方は危険視された。また、多くの人が集まって食事をするという外食文化も感染源として避ける必要が生じた。普段の生活での対人距離も大きく変化しなければならなくなった。
こうした社会変化の影響で、エンターテインメント業界も打撃を受けた。イベントで集客してマネタイズするという近年の流れが頓挫した。デジタルでネットの時代だからこそ、体験に価値がある。そう主張して価値を作っていた業界は、大きく足下をすくわれた。
飲食店は、もっと大きな打撃を受けたかもしれない。閉店が相次いだ。私自身、外食の回数が激減した。週に1、2度おこなっていた外食が、月に1度あるかないかに変わった。
逆に
IT関係の需要は増加した。在宅勤務の増加。ビデオ会議の一般化。プログラミングを学ぶための個人の投資も増大した。私自身、この半年ほど、そちら方面の仕事が舞い込み、忙しく働いてきた。
今年一番のニュースは、新型コロナウイルスによる社会の変化だろう。そしてIT業界に身を置く人間として、付随したIT需要の高まりを実感した1年だった。
● 2. ビデオ会議の増加
今年、最もよく見たIT系のニュースは、
Zoom や
Microsoft Teams 、
Google Meet を利用した
ビデオ会議の普及だろう。
「
ZOOM飲み会」という言葉も流行した。SFで見た「モニター越しに人々が気軽に話し合う未来」が、ようやく本格的に到来したという感じだった。
私自身、コロナ以降、打ち合わせは全てビデオ会議になった。だいたい、メールで数度やり取りして、プロジェクトの顔合わせをZOOMでおこない、その後はメールでやり取りをするという流れが多かった。人によっては、社内ミーティングや他社への営業をビデオ会議でおこなったりもしただろう。
私自身は、最初から最後までメールで完結する仕事もよくあるので、特に顔合わせが必要という感覚はない。しかし、急に社会が変わってしまったために、とりあえず顔を見ておかないと安心できないという気持ちはよく分かる。
IT系の会社によっては、在宅勤務が今後の標準になるところもあるようだ。全業種で移行することは無理だろうが、仕事の仕方や生活環境は大きく変わっていくだろう。できれば、この移行によって、駅近に人が集中するといった住宅事情も改善してくれればよいと思う。そして、ビデオ会議自体も減って、人類のコミュニケーションが、もう少し疎になるとよいと感じている。
●3. 2020年3月27日 コミックマーケットの開催中止
今年は
コミケが中止になった。コミケだけでなく、多くのイベントが中止になったが、自分にとっての象徴的なイベントはコミケだった。
実は去年、少し多くイベントにサークル参加してみようと思い、10件ぐらいのイベントに参加していた。ほぼ毎月イベントに出ていて、かなり忙しかった。そんなことをせずに仕事をしろよという気持ちも強かったが、物事には勢いというものがある。
そして、今年の軒並みのイベント中止である。オタク系同人誌即売会だけでなく、技術書系同人誌即売会もリアルでの開催はなくなった。そして、オンライン開催がおこなわれたりした。そう、ここでの主眼は「中止」ではない。その後の、各所での試行錯誤について触れたい。
SNSでの盛り上げによるイベント、オンラインでのダウンロード販売でのイベント、バーチャル空間でのイベント、動画のライブ配信など、この1年、様々な試みがおこなわれた。
イベントとは、古来の言い方で言えば「お祭り」である。お祭りには、一般的に「場」が必要だ。人が集まり、特別な空間だと共通認識を持つ「場」。それがあるからこそ、人々はお祭りの場所で、夜店の高い食べ物を買ったり、不要なおもちゃを購入したりする。現代のイベントでも、人々はお金を使うつもりで来て、本やグッズを購入したりする。
こうしたリアルの場の解体と、バーチャルでの再構築が、ひっきりなしにおこなわれたのが、この1年だった。通常は何年もかけて進行する実験が、非常に短い期間で集中的におこなわれた。以前は「バーチャルは、リアルより体験が弱い」と言われることもあった。しかしリアルがないのだから、バーチャルに移行するしかない。
私自身、端っこの端っことはいえ、エンターテインメント業界に属して仕事をしている。これからの活動をどうするのか非常に考えさせられた。これまでやって来たことを捨ててもいいんじゃないか。いろいろとリセットをかけてもよいのではないか。
東日本大震災のときには、人生について考えなかったのだが今回は考えた。今年1年、多くの人がこれからの人生について考えさせられたのだと思う。