3)合衆国大統領・上下院議会選挙
4年に一度の政治的お祭り騒ぎ、合衆国大統領・上下院議会選挙と同時に知事選、住民投票などが行われました。合衆国では、大統領選と同時に議会選挙から州法や条例の住民投票に至るまで様々な投票が同時に行われ、投票用紙は巨大となります。今回は、COVID-19パンデミック下で実施が危ぶまれましたが、合衆国では国の根幹を成す選挙であり、トランプ氏以外、延期を求める公人はほとんどいませんでした。
今回は、大統領本人による投票妨害、大統領本人による全く根拠のない不正選挙陰謀論の流布、大統領本人が無謀な行動で投票日1ヶ月前にCOVID-19に罹患し、死にかけるなど異例ずくめでしたが、事前予想のような圧勝ではないもののバイデン氏が選挙人投票306票で快勝しました*。
一方で議会選挙は共和党が大善戦し、下院は3議席差で民主党支配が継続したものの上院は、2021/01/05のジョージア州での決選投票で二議席のうち共和党が一議席だけをとれば上院支配を共和党が継続します。上院支配権はバイデン政権の今後2年間を決定するために民主党の不甲斐なさが改めて目立ちました。年明け1/5ジョージア州決選投票は燃えています。
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米大統領、バイデン氏確定 選挙人投票で306人獲得―魂の戦い「民主主義の勝利」2020/12/15時事通信〉
4)合衆国大統領選後のトランプ大統領ご乱行
合衆国では良き敗者“Good Loser“という習慣があり、大統領選での敗者は例え大接戦で僅かな望みがあったとしても負けを認めて国の分断を防ぐ習慣があります。2,000年大統領選でのアル・ゴア氏が典型と言えます。但し、筆者は当時のアル・ゴア氏の撤退は、有権者への重大な背信と考えています。
トランプ氏は、投票妨害を行っただけでなく、負けたあとも自分が圧倒的勝者だと嘘の主張をし、支持者をあおり立て分断し、事実上用途自由な数百億円という資金集めを今も詐術的に続けています。*
〈*何故か筆者はトランプ氏の支持者リストに載っているため、今年はトランプ陣営からの小口献金要請メールが一日十通から数十通やってくる。ブッシュ氏の支持者リストがトランプ陣営に持ち出されたものと思われるが、これまで16年間、このような事は起こらなかった〉
情けないのは共和党で、合衆国時間で12/14に行われた選挙人投票の結果が出るまで、大部分の共和党連邦議会議員がトランプ氏に同調したことです。
トランプ氏のご乱行はエスカレートする一方で、デタラメな恩赦乱発など私利私欲に大統領権限を使い続けており、このままでは国際テロールの主標的にトランプ氏とその企業はなりかねません*。
〈*イラクでの民間人大量虐殺事件を起こした民間軍事会社ブラックウォーター社の実行犯が恩赦対象となっている。終身刑であったが、軍法会議では死刑が妥当な人間であり、恩赦は、イラク市民の怒りと憎しみを煽ることとなっている〉
BBCは嘲笑し、CNNでは史上最悪の愚劣で卑怯な無能の大統領で、ジョージワシントンは、このような人物を想定して憲法を起草しなかったとまで酷評される始末です。筆者もそう思います。
トランプ氏は大統領の地位をどれだけ私利私欲に使うかしか考えておらず、そのうえ過去1世紀で最悪の人種主義者大統領としての本質を剥き出しにしています。これを制することの出来なかった共和党は最悪と言うほかありません。共和党は、ジョージア州決選投票で優勢ですが、選挙集会でトランプ氏が支持者に向けて投票ボイコットを呼びかけるなど横で哀れな候補者が顔を引き攣らせ目を白黒させるような事態に陥っています。
トランプ氏のご乱行は、1/20正午の失職まで続くでしょうが、それはトランプ氏のPay Timeでもあります。
なお、合衆国外で本邦だけニワカ・トランピストが大暴れしていますが、1980年大統領選以来11回40年合衆国大統領選を観察し続けてきた小生が中学生の時には知っていたような基本中の基本すら知らない人々が嘘を固めているような状態です。これについては木下ちがや氏が興味深い論考をしています*。ちなみに典型的な人種主義者であるトランプ氏から見れば、彼らは猿山の中でキィキィいっているだけの黄色いサルです。
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限界ネトウヨと右翼ヘゲモニーの終焉 2020/12/22 木下ちがや 論座〉
5)大飯発電所設置許可取消判決
12/4、大阪地裁は、大飯発電所(PWR 1.2GWe二基)の原子炉設置許可を取り消す判決を出しました*。関西電力は控訴しますのでこの判決をもって原子炉設置許可が失効するわけではありませんが、このような判決が出ることは青天の霹靂と言えます。
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大飯原発3、4号機の設置許可取り消し 大阪地裁 関電は「承服できない」2020/12/04東京新聞〉
大飯発電所3,4号炉は、関西電力が保有する最大の大型炉で、九州電力玄海3,4号炉と並んで国内で最も優秀な大型炉と言えます*。
〈*筆者はBWRを失敗炉と考えており、とくにABWRは最悪の欠陥炉と考えている。世界的にも新設炉はほぼ全てがPWRであり、経済設計炉であるBWRは、経済性と安全性が達成できずに本邦以外では事実上淘汰されたと言って良い〉
独立性の著しく低い本邦の司法で、伊方発電所の3号炉の運転差し止め仮処分など、このような判決哉判断が出たことは驚きです。このような司法リスクと特重施設建設遅延による年単位の運転中止など規制不適合は、元々著しく低くなっている原子力発電の経済性を更に押し下げる事となり、既に斜陽企業である電力会社の命取りとなってしまいます。加えて全国から不特定多数の原子力労働者が集まる原子力発電所は、放射線管理区画への入退室の管理・放射線防護上、大規模な濃厚接触の多発地帯でもあり、高頻度検査による全入構者のスクリーニングをしない限り所内でのCOVID-19アウトブレイクの危険が高いです*。
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玄海原発の九電社員ら9人感染 24日、佐賀県内 九電「運転や検査影響なし」2020/12/24佐賀新聞/ほかの原子力発電所でもSARS-CoV-2感染者が多発している〉
2020年7月豪雨では、九州全域に甚大な被害が生じましたが、人吉盆地を飲み込んだ7/4未明に発生した球磨川水害は、人吉市と周辺町村に甚大な被害を加えました。人的被害も甚大で、熊本県警調べでは、死者64人、うち溺死者52名でした。
球磨川は、もともと荒れ川ですが、今回は1965球磨川大水害での浸水深さ2.1mをおおきく上回る9mの浸水が観測されました。筆者が以前取材・執筆した肱川大水もそうですが、近年水害の規模が極めて大きくなり、記録・伝承上の最大被害規模をおおきく上回り、ダムや堤防といった治水機能が意味を成さなくなる、肱川の様にむしろダムが人的被害を拡大してしまうと言う本末転倒なことが発生する様になってきています。
これは気候変動によって台風や大雨が大規模になっているためと考えられており、これまでに設置されたダムや堤防などの設計と運用の前提となる気象、降雨、高水の統計が通用しなくなっていることを意味しますので、早急な対処=再設計と再評価が必須と言えます*。今年9月に合衆国山岳地帯から西海岸全域を襲った未曾有のWild Fire(山火事)**も気候変動によって激甚化したとされており、気候変動対策への政府規模での取り組みが世界では大きく進み始めています。
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熊本豪雨で球磨川「瀬戸石ダム」が決壊危機 現場証拠写真 2020/07/17デイリー新潮、
発電再開めど立たず 瀬戸石ダム 7月豪雨で主要設備が浸水 2020/11/15 西日本新聞〉
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米西海岸の山火事、煙が北欧にまで到達 過去18年で最悪の規模2020/09/17 CNN〉