コロナの流行がなければ安倍政権は2020年のオリンピックを成功させ、支持率を伸ばしたうえで悲願の改憲へと突き進んでいったはずだった。ところがその夢は頓挫した。コロナ対策の行き詰まりや自身の「桜を見る会」疑惑への批判に立ち往生し、7年間の長期政権はついに崩壊した。
特に災害に対する安倍政権のやる気のなさは、以前の記事でも指摘してきた通りである。西日本の豪雨災害のときに「赤坂自民亭」を開催していた人々は、コロナ下でもまた「お肉券」「お魚券」「Go To キャンペーン」「アベノマスク」に代表されるように、利権団体に金を回すことしか興味がないということを示した。実効性のある直接給付に関しては、野党が散々要求し、世論も同調するようになってやっと初めて重い腰を上げたのだ。
これまでであれば、こうした利権分配が第一の稚拙な政権運営についても、巧みなメディア統制や市民の「飼い慣らし」、「政権応援団」による「エクストリーム擁護」によって、その屋台骨を揺るがすには至らなかったはずだ。しかし今回は広範囲な人命がかかっている。安倍内閣の支持率が再び上昇する気配はなかった。安倍政権は倒れ、菅政権が後継となった。
大阪では維新の会が都構想をめぐる二回目の住民投票を行った。前回とは違い公明党が賛成にまわったことから、可決は必至だと考えられていた。しかし投票日が近くなるにつれて反対派は増加し、また投票日直前に、大阪府を分割した場合の行政コストが200億円増加するという試算が報道されるなどした結果、都構想は再び僅差で否決された。
不要不急の住民投票を行った代償として、大阪ではいち早くコロナ第三波が到来した。医療崩壊が発生し、吉村知事は自衛隊や近隣の府県に支援を要請する事態にまでなった。大阪府は5月、コロナウイルスに関して独自の指標である「大阪モデル」を作成した。「大阪モデル」は作成当初は評価する声が多かったが、第二波到来頃から基準が恣意的に変更されていき、ほとんど指標として役に立たないものになっていた。
松井大阪市長は4月、医療現場で感染予防のための防護服が不足していることから、雨合羽やレインコートの寄付を市民に呼びかけた。その結果30万着の雨合羽やレインコートが集まったが、それらは大阪市役所の玄関ホールに長い間放置されていた。
また8月には吉村大阪府知事が「ポビドンヨードを含むうがい薬はコロナに効く」と誤解されるような会見を行い、イソジンなどのうがい薬が一時的に店頭から消えるなどの混乱を引き起こした。こうしたパフォーマンス優先のコロナ対応が、第三波への楽観視と対策の遅れに繋がった可能性は否定できない。