同じ愚かしさと危険性は、
憲法15条1項(主権者国民の公務員選定罷免権)のみを振り翳して、
23条(学問の自由)を無視して日本学術会議の人事に介入しようとした菅首相にも共通している。
私は、憲法学者になってからもう40年以上も政治と付き合って来たが、最近、自民党内の空気が変わってしまった。
人間が本来的に個性的な存在である以上、意見は当然に多様で、
自由で民主的な社会は「異論共存」を楽しむ場である。しかし、最近の自民党は、自分達と違う意見とりわけ自分達を批判する意見が存在することが「許せない」ように見える。そして、遂には
異論を権力で封殺しようとする。
しかし、これこそが
全体主義に向かう「いつか来た道」である。
<文/小林節>
こばやしせつ●1949年生まれ。法学博士、弁護士。米ハーバード大法科大学院のロ客員研究員などを経て慶大教授。現在は名誉教授。保守派であり、改憲論者であるが、その立場から一貫して現在の自民党の改憲案に異議を称える。14年の安保関連法制の国会審議の際、衆院憲法調査査会で「集団的自衛権の行使は違憲」と発言し、その後の国民的な反対運動の象徴的存在となる
<記事提供/
月刊日本2020年1月号>
げっかんにっぽん●Twitter ID=
@GekkanNippon。「日本の自立と再生を目指す、闘う言論誌」を標榜する保守系オピニオン誌。「左右」という偏狭な枠組みに囚われない硬派な論調とスタンスで知られる。