政権与党による「世論誘導」や「圧力」発言。報道時には実名で報じ、責任を負わせよ

ファクトチェックと共に実名報道を

 日本学術会議に推薦された6名の学者の任命拒否問題をめぐっては、自民党の甘利明衆議院議員が8月6日のブログに日本学術会議が「『千人計画』には積極的に協力しています」と記した内容が事実のように拡散した。後日、複数の報道機関によってファクトチェックがおこなわれ、それを受けて甘利氏は、「間接的に協力しているように映ります」と記述を修正した。 ●中国の研究者招致「千人計画」当事者の思い 「学術会議が協力」情報拡散の背景は – 毎日新聞 2020年10月15日  事後的なファクトチェックではフェイクニュースの拡散を防ぐことは難しい。それでも、きちんと検証することによって、甘利氏が間違った印象の流布に加担した、ということは事実として残すことができる。そして、そのようにファクトチェックをおこなうことで、意図的に世論誘導的な発言を権力者がおこなうことを一定程度、抑止することができる。  しかし、それが匿名の「官邸幹部」や「自民党幹部」などによっておこなわれた発言であれば、事後的な検証はできても、それによってそのような発言を抑止することができない。  だからこそ、意図的な世論誘導の発言を報道機関が紹介する際には、実名を背負わせることが大切だと思うのだ。 ◆短期集中連載「政治と報道」第6回 <文/上西充子>
Twitter ID:@mu0283 うえにしみつこ●法政大学キャリアデザイン学部教授。共著に『大学生のためのアルバイト・就活トラブルQ&A』(旬報社)など。働き方改革関連法案について活発な発言を行い、「国会パブリックビューイング」代表として、国会審議を可視化する活動を行っている。また、『日本を壊した安倍政権』に共著者として参加、『緊急出版! 枝野幸男、魂の3時間大演説 「安倍政権が不信任に足る7つの理由」』の解説、脚注を執筆している(ともに扶桑社)。単著『呪いの言葉の解きかた』(晶文社)、『国会をみよう 国会パブリックビューイングの試み』(集英社クリエイティブ)ともに好評発売中。本サイト連載をまとめた新書『政治と報道 報道不信の根源』(扶桑社新書)も好評発売中
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『日本を壊した安倍政権』

2020年8月、突如幕を下ろした安倍政権。
安倍政権下で日本社会が被った影響とは?