身近な知人が「LGBT嫌悪」を吐露。政府が差別を助長する国で、彼はなぜ憎悪を抱えたのか?

突然知人が反LGBTをカミングアウト

 このようにLGBTQに対しては虹が出るどころか、黒い雲に覆われているポーランドだが、ワルシャワなど一般的にリベラルだとされている都市では、堂々と差別が行われている様子を目にすることはあまりない。むしろ、バルコニーにレインボーカラーの旗を掲げて、LGBTへの支援をアピールする家をよく見るぐらいだ。  そんな中で、先日筆者が同年代の知人たち(30代)と話していたとき、知人Pによる冒頭の発言が飛び出たのだ。  それまで筆者はLGBTQに対して差別的・否定的な人といえば、「LGBTフリーゾーン」を謳う地域に暮らす人信仰心の厚い高齢者、性的マイノリティに対してのみならず外国人にも差別や暴力行為を働く極右(スキンヘッド)のような人々をイメージしていた。  それまでそんな素振りも見せず、笑顔で話していた知人Pが突然LGBTに対して否定的な発言をしたことには、正直面食らってしまった。

「LGBTで盛り上がってるのは若者だけ」

 いったい、LGBTQの何が彼にとって問題なのか。筆者を含むそのほかの知人たちと、Pとのやりとりはこのようなものだった。 ——LGBTの何が嫌なの? P:単に好きじゃないんだよ。別に憎んでるわけじゃないけど、関わりたくないんだ」 ——誰か知り合いにLGBTの人がいたり、直接会った経験はあるの? P:「ないけど、テレビでよくデモをしてるニュースとか映ってるだろ。それが嫌なんだよ。観たくないんだ」 ——ニュースでは鉄道会社だったり、他にもしょっちゅうデモを取り上げてるけど、それには腹が立たないの? だとしたら、ニュースで取り上げられていることじゃなくて、LGBTに対して何か嫌な感情があるんじゃない? P:「昔はそんなことなかったのに、最近は若い奴らがうるさいんだよ。LGBTで盛り上がってるのは若い奴らばっかりだろ?」 ——つまり、昔はLGBTはいなかったけど、今は“流行ってる”から増えてるってこと? P:「10年、20年前にLGBTが差別されていて、それで彼らが権利を主張していたのは別にいいんだよ。でも、今は満たされているのに、『もっと寄越せ』って言ってるじゃないか」 ——今は公に権利を主張しやすくなったから、増えているように見えるだけじゃない? それに、政府が「LGBTフリー」を推し進めてるみたいに、ちっとも他のみんなみたいに権利が認められてるわけじゃないし。 P:「でも、昔に比べたらもっと権利を寄越せって言ってるだろう?」 ——それは他の人たちには当たり前に与えられているものを求めているだけで、何も補助金とかをもらえるように主張しているわけじゃないでしょ? そもそも、LGBTの権利が向上して、Pに何の害があるの?
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官民が一体となったヘイトのサイクル
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