身近な知人が「LGBT嫌悪」を吐露。政府が差別を助長する国で、彼はなぜ憎悪を抱えたのか?

Equality March 2020 In Katowice

ポーランド語で ‘miłość nie jest zbrodnią(愛は犯罪じゃない)’ と書かれたプラカード
(Photo by Artur Widak/NurPhoto via Getty Images)

 筆者が同年代の知人たち(30代)と話していたとき、LGBTQが話題に挙がったのだが、そのとき同席していた一人がポツリとこう言い放った。 「俺、あんまりLGBTは好きじゃないんだよね」  それまで和気藹々とビールを飲みながら話しあっていただけに、突然の告白は筆者のみならず、そのほかの友人たちも驚かせた。

経済成長の影で止まったままの人権感覚

 筆者がいまいるのは、2000年代に入ってから一度もマイナスになることなく、高い経済成長率を維持している東欧・ポーランド。今年はコロナウイルスの影響があるものの、例年は日本からも多くの観光客が訪れ、親日国としても知られている。そんなポーランドだが、EU内でもっともLGBTQへの差別が根強い国であることは、ここ日本ではあまり知られていない。  リーマンショック下でもEUで唯一プラス成長を記録するなど、民主化後の90年代、EU加入後の00年代で順調に発展してきたポーランド。その背景にはEUからの多額の投資や補助金も大きく影響している。  特にウクライナと共催したUEFA EURO 2012以降は、目に見えてインフラの整備が行われており、好景気を肌で感じられるような目覚ましい発展を遂げた。  その影で、ポーランドは保守的なカトリック信者が多いことや、与党である「法と正義」が反LGBTQ的な態度を貫いていることもあり、いまだに性的マイノリティへの差別・偏見が大っぴらに行われている

国や自治体が公に差別を助長

 例えば、ポーランドでは国土の3分の2にあたる地域で、自治体が「LGBTフリーゾーン(=排除区域)」であることを公言している。これらの地域では寛容性を説くことや平等を謳うNGO団体への資金援助が禁止されている。つまり、LGBTの権利向上に消極的などころか、自治体が差別を助長しているのだ。  これだけでもEUに所属する近代国家とは思えない有様だが、事態はこれに止まらない。7月末、こういった差別が横行していることを重く見たEUは、これら「LGBTフリーゾーン」の自治体への補助金申請を却下した。それに対し、先日の大統領選で勝利したばかりのアンジェイ・ドゥダ氏率いる「法と正義」は、国がそれらの地域を援助するとしたのだ。自治体どころか、国全体が差別的な仕組みを推し進めているのである。  ドゥダ大統領はこれまでも「LGBTの権利は共産主義よりも破壊的なイデオロギーである」と述べており、大統領選でも同性パートナーの養子縁組、公立学校でのLGBTQの権利についての授業の禁止などを謳っていた。  もちろん、ポーランド国内でもこういった差別に対する反発の声は少なくない。8月6日に行われたドゥダ大統領の就任式では、野党の国会議員たちがレインボーカラーのマスクを着け、カラフルなファッションで登庁した。また、同月には首都ワルシャワでLGBT活動家の保釈を求める大規模なデモ行進も行われている。
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知人との会話で気づいたこと
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