コロナ禍で重宝がられた中国の最先端OMO「フーマー」。成長鈍化の一因にコロナならではの理由も

フーマー実店舗近隣住民たちの「不満」

天井のレールへ上げるエレベーター

オンライン注文品を入れる袋と天井のレールへ上げるエレベーター(アンリデザイン提供)

天井のレールを移動する袋

注目させるためかシャーシャーと音を立てながらレールを移動する袋(アンリデザイン提供)

 広州、大連、上海の複数の中国人の話を聞くと、ほぼ共通して出てくるのが、「高い」、「狭い」、「人が少なくて活気がない」だ。  フーマーのターゲットは、都心の高所得層の若者で、日本やヨーロッパ製品など外国製品も多数並ぶ高級スーパーに位置づけられる。  またフーマーは、DXを促進することで利益率を高めているらしく、同じ面積あたりの大手スーパーの3、4倍の売上を達成している。そのため各店舗も「ウォルマート」などの競合スーパーと比べるとコンパクト。その代わりレストランエリアを広めにデザインしているようだ。
隣接するフードコートエリア

隣接するフードコートエリア(アンリデザイン提供)

 来店者が少ない印象を持つのは、オンライン購入も多いことや事前に注文して受け取りだけという客もいるからだと思われる。  ただ、こうしたデメリットも、OMOを徹底していることでデメリットと捉えないユーザーが少なくない。  「店に行ったことは最初の1回だけで、後はずっとオンラインでお米から水、シャンプーまでほぼすべての日用品をフーマーで買っています」(大連・30代女性)  この女性は元々「タオバオ」のヘビーユーザーでスマホから洋服まで買っていたため、フーマーにもすぐに魅了されてハマったようだ。

顧客のビッグデータをさまざまに「活用」

 話を聞いた利用者からは不評も聞かれるがフーマーの一番の目的は、顧客の行動、好み、傾向など細かな購買データを集積することにある。それを自社グループの商品開発や仕入れの効率化、または、「Tポイント」のように情報として販売して利益を出しているとも考えられる。  実店舗は倉庫も兼ねているので仮に来店者が少なくてもオンライン販売も含めてトータルで利益を出せれば問題ない。  しかし、取材を進めるとちょっと気になる話も出てきた。新型コロナの影響もあるのか、成長に陰りが見え始めていることだ。19年の記事を見ると、アリババは19年末に300店。今年20年末までに2000店を計画しているとぶち上げていた。だが、達成は事実上、困難な状況だ。
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成長の翳りの要因は中国人気質!?
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