ニューヨークの路上に置かれたPCR検査や抗体検査をする場所の看板。ニューヨーク州のクオモ知事は誰でも無料で検査を受けられる方針を打ち出している
(Photo by Noam Galai/Getty Images)
全世界で明暗を分けているパンデミック対策。鍵は「検査」
2020/04/22から始まった本連載の新型コロナ感染症シリーズも遂に第20回となりました。4/22といえば、筆者にとっては、本邦では
最悪100万人死んでも不思議ではないという筆者予測*や
最悪42万人死亡という西浦予測**が、明らかに米欧と異なるパンデミックの挙動で大外れする兆候が見え始めた頃です。この頃になると筆者は、
謎々効果を強く意識していました***。現在では、米欧の論調でも碌なパンデミック対策をしなかった本邦をはじめ東部アジア・大洋州諸国を守る
謎々効果の存在に合意が形成されています。
〈*
筆者のツイッターより〉
〈**
行動制限なしなら42万人死亡 クラスター班の教授試算 [新型コロナウイルス]2020/04/15 朝日新聞/不完全ではあるが、緊急事態宣言という形で公式の介入=社会的行動制限が行われていた事は留意すべき。ざっくり言えば、介入によって犠牲は一桁ほど下がるというのが今回の米欧における事例から得られた知見である〉
〈***
筆者のツイッターより/謎々効果の威力は凄まじく、東部アジア・大洋州諸国でのコロナ禍の威力は米欧の1/100に抑えられている〉
東部アジア・大洋州を守る謎々効果(百万人あたり死亡率)
100万人あたり死亡率は、英国700人、イタリア600人、合衆国400人であるが、日本は8名で、東部アジア・大洋州諸国は米欧の1/100から0で推移している。これが全世界から注目されている「謎々効果(East Asian and Oceanian Mysterious Effect)」であり、最近はFactor Xとも呼ばれている。理由には諸説あるが、全て仮説の域である。
Our World in DATAより
日本では謎々効果に加えて、市民が
自主的介入=自主規制を強烈に行うという特徴があり、公的介入や検査、検査、検査、検査、検査、追跡、隔離、治療、検査の循環が重要では無いという誤謬があります。しかし、それはとんでもないことで、
パンデミックにおいてワクチンが無い状況では、介入=社会的行動制限によってパンデミックの拡大を抑え込んだところで更に検査を拡大し、ウィルスを閉じ込め、消滅させるというのが全世界共通の定石とでも言うべき標準的パンデミック対抗法です。典型的成功事例は、地上の地獄を味わった
合衆国ニューヨーク州(NYS)やイタリアなど
スウェーデンを除く旧西欧です。またニュージーランド(NZ)を代表に
東部アジア・大洋州諸国にも多く見られます。但し、制圧過程にあっても僅かな隙からパンデミックは再燃します。現在これと闘っているのが豪州のヴィクトリア州です。
この標準的手法から外れた国や州は、全て「
第一次第二波パンデミック」によって3月に巻き戻るか、第一波の制圧すらできていません。その典型が
合衆国の多くの州と日本です。
東部アジア・大洋州における成功国と失敗国
第一波のあと徹底した検査、追跡、隔離、治療、検査の循環でパンデミックを制圧したのがNZなどである。
豪州も同様であったが、経済活動再開の中、低所得層の集合住宅などの見落としから第二波が発生しヴィクトリア州の第二回ロックダウンを行っている。これは、パンデミック対策は全住民へ無償提供されなければならないという教訓となっている。
日本は国策による検査抑制を行った為の典型的な失敗国であり、対処が遅れ全国的な第二波パンデミックに見舞われている。
Our World in DATAより
このように検査=PCR検査は、ワクチンも特効薬も無く、標準療法も未確立のCOVID-19との闘いではなくてはならないものなのです。検査抑制などと言う頭のおかしな国策を行っているのでは全世界で本邦のみです。
そして、「検査をすると患者が増える」や、「検査をすると人権侵害」といった
エセ医療・エセ科学デマゴギーが横行しているのは、世界で唯一本邦のみです。加えて合衆国では、
トランプ大統領とその周辺のみが主張していますが、誰もその発言には従いません。
さて、医療における検査には不確実性がつきまとい、誤診は警戒すべきものです。しかし全世界では、そういった議論は抗体検査では論じられていますが、PCR検査では全く話題になりません。
本邦医学・医療業界を席巻してしまった「検査をすると患者が増える」や、「検査をすると人権侵害」といったエセ医療・エセ科学デマゴギーは、そのカケラすら存在しません。何故でしょうか。それは、
PCR検査が原理的に極めて高精度であり、今日では「感度70% 特異度99%」といった「仮に」の話は存在し得ないためです。
今回は、そのことを実例から簡単に論じます。
続々とPCR検査の精度の高さが実証されている日本(Jリーグ公式検査をみる)
市中の感染者を診断するはずのPCR検査は、相も変わらず国策によって電話相談と保健所によって門前払いが激発しており、市民を苦しめ、病院は院内感染の脅威にさらされています。そういった中、プロスポーツや劇団など職域でのPCR検査が独自に進められ、一部ではその結果が発表されています。ここでは、2020/07/24に発表されたJリーグによる第二回公式検査について取りあげます。
Jリーグによる第二回公式検査最終報告2020/07/24(出典:
Jリーグ)
検体採取:7月10日~12日、16日~19日
検査対象:J1・J2・J3全56クラブの登録選手・チームスタッフ、Jリーグ登録審判員、その他関係者
検査結果:検査数3,299、全員陰性
この直後、Jリーグ公式検査の他の検査で検査陽性者(一部自覚症状あり)が発見されるなどで試合が中止されています*が、ここでは一つの統一された検査を評価をしますので、第二回公式検査のみを評価します。
〈*
2020明治安田生命J1リーグ 第7節 サンフレッチェ広島 vs 名古屋グランパス 開催中止のお知らせ2020/07/26Jリーグ.jp〉
ここでは、前回同様に
金井説、室月仮説、岩田仮説の三つと、筆者が世界と日本の実績から特異度と感度を算出したものを用います。また、計算方法は
東京大学・保健センターで公開されているもの(
魚拓)を使います。詳しくは、
前回と
前々回の記事をお読みください。
Jリーグ第二回公式検査結果 検査人数3299人,陽性者0人,陰性者3299人
Jリーグ第二回公式検査を金井説で試算 罹患率0%,検査人数3299人
偽陽性者495人,陰性者2399人
Jリーグ第二回公式検査を室月仮説で試算 罹患率0%,検査人数3299人
偽陽性者330人,陰性者2969人
Jリーグ第二回公式検査を岩田仮説で試算 罹患率0%,検査人数3299人
偽陽性者33人,陰性者3266人
Jリーグの第二回公式検査では、検査陽性者がゼロ人=罹患率が0%ですので、陽性者と偽陰性者は存在しません。しかし、金井・室月・岩田仮説では特異度が低い「仮定」のために偽陽性者が母集団の約1%(33人)から約15%(495人)発生しています。