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倫理研究所の創設者・丸山敏雄とは?

 倫理研究所の創立者・丸山敏雄は、前述の戦前の道徳であった修身を単純化してわかりやすくすることで、「いい行動はいい結果を招く」というどんな宗教観でも「まあ大体そうだね、いいよね、7割同意するわ」くらいの生活訓にすることで、敗戦後の日本というアイデンティティ喪失の中、修身の復権をはかったと考えていいと思う。生活訓であるために宗教色も薄れて、一般からの抵抗感も軽減させることに成功した。  そして純粋倫理という言葉は、どう見てもカントの「純粋理性批判」から頂いている。カントはどれだけ疑っても理性的に否定し続けても最後に超越者の存在を認めざるを得ないという考えだが、丸山敏雄はそれを素朴にひっくり返して最高善を求め続けると自身の幸福と同一化するとした感じだ。「我思う ゆえに我あり」から、「我いいね! ゆえに社会もいいね!」へ……。分かりやすさは難解さを駆逐する……。  で、この丸山敏雄、実は倫理研究所立ち上げの前は、PL教団の前身であるひとのみち教団に所属し幹部になっていた。そこで第二次世界大戦に突入していくわけだが、そのとき弾圧を受けることになる。ひとのみち教団は教育勅語を教義の一つに置いていたのに弾圧を受けた理由は、不敬罪。  教育勅語を天皇の御心とちがう形に解釈した疑いだ。この罪状にはこじつけ感があるのは否めないが、朱子学的修身を、単純化して読み替えた丸山敏雄と重ねてみるとなかなか興味深い。また、成文化した教義をもたないPL教団と、PL教団員の生活指針であるPL処世訓は、倫理研究所との共通点が非常に多い。

失敗するのは自分の心のせい、成功した人は心が素晴らしい人……?

 とはいえ、綿々と日本で受け継がれてきた修身を礎にしているのなら、鴨頭氏や倫理法人会の活動も一定の妥当性はあるのでは?  確かに。居酒屋のトイレに書いてあるノスタルジー溢れるおやじの小言程度には。でも、中小企業の社長などが所属する会でそれが流通すると……どうかな? というのが久保内の考えだ。  また、成功者や話題になっている人は、それだけで優れている(心の修身(実践)ができていないと原理的に成功しえない、から)という思想にまっすぐにつながることも危惧している。つまり成功者は成功しているという一点をもって、人間的に学ぶところがあるとお墨付きが得られてしまうということだ。鴨頭氏の最近の動画コラボ相手である、堀江貴文氏、N国党立花孝志氏、中田敦彦氏、ラファエル氏などが、人間的にどうかということについて久保内の私見は差し控えたい。壮観だなあとは思います。  戦前の修身を復権させてより単純化・先鋭化された考えを、「いいね!」と取り入れたらどうなるか……。とりあえず倫理法人会の勧める活力朝礼の方法を見ていただこう。  ここにもいっぱい活力朝礼あるから見てみよう!   一目瞭然。こうなります。  そもそも朱子学的修身が、江戸時代から大政奉還を経て天皇の治世に戻ってからも採用され続けたのか。それは、支配者層に都合がよい考えだったからだ。  さらに、鴨頭流の考え方で言えば、自分が心から信じてポジティブな姿勢をとれば、必然的に社会に認められて幸福になってしまうもの。  逆に言えば、社会のすべての理不尽や、家庭不和、職場での軋轢、過重労働なんかも全部自分の心に悪いものがあるから、ということになる。この考え方はたやすく人を自責の念で押しつぶせると考えるのは自分だけだろうか。  また、それを中小企業の社長に教えて、成果の出ない社員に対してどんな態度に出るか想像に難くないのではないか? あっ、優秀な倫理の会員である社長は、社員が成果を出せないのは当然社長である自分の心が悪いからと考えるんですよね。そうですよねー……とはならないであろう。
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中小のワンマン社長に都合のいい理屈
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