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新型コロナ感染のリスクを前提とした社会へと変化する
新型コロナウイルスの猛威で世界中が経済活動の自粛を余儀なくされたが、先進諸国はようやく活動再開のフェーズへ。
元ゴールドマン・サックスの金融コラムニスト・大空翔氏と、
金融業界を志す現役東大生たちが鎬を削る東大金融研究会のなかでも随一の頭脳を持つ石川憧氏によるスペシャルオンライン対談を開催。パンデミック第2波のリスクもはらむ先行き不透明な未来を、金融エリートたちはどう見据えているのか――。
――新型コロナウイルスの感染拡大が収束に向かえば、世界経済は回復軌道に乗ると考えていいのでしょうか?
大空 ずっと巣ごもりを続けてきたので、その反動となる戻りの需要は見込めると思います。しかし、世の中の状況が完全に元通りになることはありえません。例えば、今までなら証券会社のアナリストは四半期ごと、あるいは半期ごとに欧米やアジアの投資家のもとを訪問していました。新型コロナ流行後はそれが取りやめになっていて、せいぜい電話でコンタクトを取る程度にとどまっている。感染が収束したとしても、すぐにアナリストが出張に赴くとは思えません。かつてと比べて、いろいろな意味で渡航のためのコストが高騰しているのです。
石川 僕も同感で、単純に元の状態に戻ることは期待できないと思います。常に第2波、第3波のリスクがあることが前提となっての経済活動になってしまいますから。具体的には、求人広告や飲食、小売り、旅行、空輸などは、依然として苦境が続くものと思われます。特に対面営業の業態は厳しいはず。旅行もインバウンドは当面の間、回復は難しそうです。
――日本経済の柱でもある製造業についてはどのような見通しですか?
大空 今回の新型コロナ騒動で、“非常時のコントロールは不可能”であることを痛感した各企業が、生産拠点を国外から国内へと回帰させる動きが見られます。各国の政策も内向きで、過去20年間の経済成長の道筋とは真逆になっていますね。これまで世界経済は4%台のGDP成長が可能だったのが、今後は3%とか2.5%といった水準が限界値となってきそうです。
石川 やはり、感染拡大の第2波、第3波が注視すべきポイントですね。中東で最も深刻な新型コロナ不況に陥っていたイランが性急に経済活動を再開したら、感染者数が再び激増してしまった例もあります。まずは中小企業の存続のためのサポートが必要不可欠になっていると思います。
大空 アナリストのなかでは先行きを楽観視する動きもありますが、これを信じてはいけません。例えば米国経済の成長率は第2四半期(4~6月)にマイナス30%台まで落ち込むものの、第4四半期には20%まで回復するといった予想も出ていますが、これはあくまで前四半期と比較した数字にすぎません。’00年のITバブルの崩壊直後も対前四半期比では一時的に回復する局面が見られたものの、長続きはしなかった。前四半期との比較はまやかしの見方で、本来は前年同期比の推移で検証すべきです。