検察庁法改正案への抗議の声に水を差す人が知っておくべき、今改正案の問題点

審議過程における、憲政史に残るずさんさ

 前述したとおり、この法案は「束ね法案」です。束ね法案によって何が起きたかというと、議論される委員会が法務委員会ではなく、内閣委員会で、国家公務員法の改正と一緒になっています。  更に、束ね法案だから、という理由だからか、内閣委員会では森法務大臣の出席すら認められませんでした。  束ね法案自体が筋悪です。野党は国家公務員法の改正そのものには賛成しているわけなので、与野党合意が得られる法律は、コロナ下なので速やかに成立させ、野党や世論の了解が得られない法案は、別途充分に時間が取れる時に審議する必要があるでしょう。  しかも、金曜日に審議入りして実質審議一日で委員会採決なら、ほぼ「審議せず通せ」と言っているに等しいものです。  これは、唯一の立法機関である国会をコケにしているし、国民の付託を受けた立法府議員をコケにしている、適正な手続きなど皆無の審議姿勢です。与党理事や議員は、自分たちの存在価値を何だと思っているのでしょうか。  与党議員にとって、理事や委員、委員長のポストは、大臣になるための「順番待ち」かなにかなのでしょうか。議員の仕事にひとかけらでも誇りはないのか、と言いたくなります。

最後に

 #検察庁法改正法案に抗議します のハッシュタグが盛り上がると、「よくわからないのに反対している」という批判が上がりました。たしかに、法の条文を全て理解している人は少数でしょう。 しかし、そもそも、丁寧な審議を通じて国民に法改正の必要性を説明するのが、政府の役割です。このように拙速な審議で国民が理解できていないのは当然です。 そもそも、法の立て付け自体がぐちゃぐちゃな上、ウルトラCで解釈変更した上で後付で法改正を行うなど、立法機関としての存在意義を問われる自体です。 政府が一旦法案を引っ込め、黒川検事長の辞任後にあらためて国民に対して丁寧な説明を果たされることを期待しています。
えんどう・ゆうま(Twitter ID:@yumaendo/筆者のnote)●早稲田大学卒業後、グーグル株式会社(現グーグル合同会社)に入社。中小企業向けセールスとアジア太平洋地域の分析を担当。退社後、CMO株式会社を設立し、インハウス化やマーケティング戦略支援、マーケティング教育などを手がける。デジタルマーケティングについてなどを「ブログ」にて執筆・公開中。著書に『世界基準で学べる エッセンシャル・デジタルマーケティング』(技術評論社)
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