迅速に「困っている市民に手を差し伸べる」。注目を集める明石市“暴言”市長のコロナ対策

“暴言”の舞台裏には、市民の安全を思う気持ちがあった

手書きメモを指さす泉市長

手書きメモの「行政の使命・役割」の部分を指さす泉市長

 泉は“暴言”で一躍全国に名をはせた。「火つけてこい!」は確かに“暴言”だ。だが発言には前後がある。あの発言は、市民が亡くなる事故が起きた道路の拡幅工事が用地買収の難航で一向に進まないことにいら立ち、担当職員を叱責する中で飛び出した。 「7年間、何しとってん。アホちゃうか? すまんですむか。立ち退きさせてこい。お前らで。きょう火つけてこい! 燃やしてしまえ。ふざけんな。今から建物壊してこい」  こうして直前直後を聞いても“暴言”は“暴言”だ。だが泉はこの後、こんなことも言っている。 「ここは人が死にました。角で女性が死んで、それがきっかけでこの事業は進んでいます。ホンマに何のためにやっとる工事や。安全対策でしょ。(担当者)2人が行って難しければ私が行きますけど。私が行って土下座でもしますわ。市民の安全のためやろ。腹立ってんのは、何を仕事しとんねん。しんどい仕事やから尊い。相手がややこしいから美しいんですよ。一番しんどい仕事からせえよ。市民の安全のためやないか」(一部抜粋)  まさに市民目線のアツい発言だ。だから“暴言”を浴びせられた当の職員とは、その後わだかまりはないという。  しかもこの発言は発覚の1年半も前のもの。その録音データが、なぜ市長選挙の3か月前になって飛び出したのか? しかも問題の箇所を切り取り、マスコミ各社に一斉に送りつけられる形で……子どもでもわかる。  だから市民は圧倒的な支持を泉に寄せた。 泉…………80795票 次点候補…………26580票  ダブルどころかトリプルスコアで、報道各社が投票終了の20時と同時に当確を打つ“瞬殺”だった。

泉市長「選挙開始1時間で勝利を確信した」

 私はイジワルく聞いてみた。 ――お前、計算してたでしょ? 市民は圧倒的に支持してくれる。だから出直し選挙で圧勝して、その1か月後の任期満了選挙で対立候補は出てこない。出られない。そこまで計算して出たんだろ?  自分が辞めた後の出直し選挙で再選されると、任期はもともとの任期満了までしかない。だから泉の場合、再選されても残り任期は1か月しかない。すぐに次の選挙になるから税金のムダになると批判されていた。 泉:いや、ホンマに自信なかった。辞職してからずっと地元を離れて別の場所に蟄居しとったんや。東京のマスコミは「この暴言市長、とんでもない」と批判を繰り返す。でも地元からは「みんなわかってる。早う帰ってこい」という声が届く。それで結局(出直し選)告示の3日前になって再出馬を決意して立候補したんやけど、告示日になっても自信なかった。でもな、立候補して街頭に出たら反応が凄いんよ。「市長、よう出てくれた。わかってるで。みんな応援してる。がんばって!」って、めちゃくちゃ応援がアツいんや。だから選挙開始1時間で「これは勝てる」と確信したわ。
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「Too Fake」とは大違い
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