泉市長が職員に渡した手書きメモの一部。「困っている市民」と「行政の使命・役割」を囲って強調してある
4月23日午後、明石市役所の市長応接室で待っていると、泉が「お~、お待たせ」と言いながら入ってきた。もちろんマスク姿だ。応接テーブルを挟んで、ソーシャル・ディスタンスを保ちながらの取材である。
私は冒頭からツッコんだ。
――お前さあ、広報文に「困っている市民に手を差し伸べるのが行政の使命・役割」って、これスローガンやろ? 書いてることには同意するけど、よう書いたなあ。
泉:いや、これにはわけがあるんや。今回の補正予算は、もともと私が「こんなことやろう」とアイディア出して、紙に手で走り書きして職員に渡したんや。でもこの緊急対策を急いで始めるには、職員も休日返上で頑張ってもらわな間に合わん。だから職員のやる気を鼓舞するために、あれを紙に書いて渡したんよ。「困っている市民に手を差し伸べるのが行政の使命・役割」やから、頑張ってくれという意味を込めて。そしたら、できあがった広報資料にもそのまま書いてあったわけ。
その手書きのメモを泉が職員に渡したのは、緊急事態宣言が出された4月8日のこと。「困っている市民」と「行政の使命・役割」の文字が四角く囲って強調してある。
明石市の緊急対策広報資料の冒頭の1枚。いちばん下にあの言葉が記してある
そして他の2枚の紙には、以下の「具体策」が手書きされていた。
<補正予算のポイント>
1.感染症対策の徹底
2.市民生活への緊急支援
(個人商店、ひとり親家庭など)
3.弱者へのセーフティ・ネット
(高齢者・障害者・子どもへの配慮など)
<3つの緊急支援策>
1.個人商店に、すぐに100万円
来週中に、賃料2か月分を緊急支援
2.ひとり親家庭に、さらに5万円
5月分の児童扶養手当に上乗せ(約10万円支給)
3.生活にお困りの方に、さらに10万円
生活福祉資金利用者への追加支援
これらのアイディアはすべて泉が出した。しかし、それを肉付けして手続きを定める職員がいなければ、施策は実施できない。泉のメモを受けて市の職員が急ピッチで作業を進めた結果、明石市は8日後の
16日、緊急事態宣言が全国に拡大されると同時に、独自の緊急支援策を打ち出すことができた。そして
21日には支援金の予約の受付を開始し、24日には振り込みを始めている。実に素早い。
泉:とにかくスピードが大事やから。
支援が必要な人はみなせっぱつまってるんや。今すぐせな意味ないやん。
そう。緊急支援は「すぐやる、すぐできる」じゃないと意味がない。