旧ソ連の特殊部隊、スペツナズ教官だったパベル・ツァツーリンが渡米後設立したRKCという団体で日本人初の認定インストラクターになった松下タイケイ氏
今回の新型コロナに伴う外出規制やスポーツ施設そして道場の閉鎖の中、トレーニングができない方々がいるのではないかと察します。
本来このような緊急事態に備えて自分の部屋をトレーニング器具で「
要塞化」するべきです。私の部屋も
ケトルベル*やバーベルそして懸垂台に鎖や吊り輪がぶら下がっています。ホームジムというより
中世ヨーロッパの拷問室に限りなく近い雰囲気を醸しだしてさえいます。〈*鉄製の球体に取手がついたロシア伝来のトレーニング器具。アメリカでも大流行した〉
アメリカではケトルベルが品薄でプレミアム価格がついているそうですが、日本もトレーニング器具の品薄到来も近いのではないでしょうか?というわけでご自分に合ったトレーニング器具とトレーニング方法で自宅トレーニング行ってください。
それでも器具を買いそびれてしまった、あるいは器具購入を優先できない方々にも器具を使わないトレーニング方法があります。
狭い部屋で最小限の器具、最たるものとしてはやはり売れ行き好調のポール・ウェイド著「
プリズナー・トレーニング」(CCCメディアハウス)になります。原著の発行人がRKC(Russian Kettlebell Challenge)ケトルベル認定コースの運営者でもあった関係で、当時パベル・ツァツーリン(※ロシアの特殊部隊スペツナズのトレーニング教官などの経歴を経て、アメリカでケトルベル普及に尽力している人物)をはじめとした上級インストラクターたちが1種目を10ステップに分けて初心者でも簡単にできるフォーマットを高評価していました。
ちなみにこのプリズナー・トレーニングを使った行き過ぎた企画がパベルを激怒させ、パベル自身がRKCを離脱してStrongFirstという新たな団体を作るきっかけになったともいわれていますが、これはあくまで蛇足として聞き流してください。筆者としては、プリズナー・トレーニングの初心者向けに紹介されている壁に手をついた腕立て伏せや地に足をつけて行う懸垂の発想は非常に斬新なものだと思っています。
パベルがケトルベルの認定コースを2001年に発足して以来、旧ソ連や東欧のトレーニング理論が一般にわかりやすい形でケトルベルの知恵へと反映され、さらにバーベルや自重トレーニングに発展していきました。彼の強みはやはり天才であることと、ロシア語の読解が可能なためソ連時代の研究論文が読めることです。
ソ連崩壊から30年経過した今日のロシアトレーニング界がどのような形態になっているか不明ですが、現在アメリカやヨーロッパではこの流れからあらゆるトレーニング手法が派生しているといえます。旧ソ連や東欧への復古、さらにビクトリア王朝期のボディービルディングブームへの復古から様々なトレーニングスタイルが生まれているのです。もはや
重い物を挙げて筋肉を増やす、脂肪燃焼させて体重を落とすというだけのレベルではないのです。
その中でパベルが念を押していたのが
テンションの重要性。
テンション=力、単純明快な言葉ですがこれを実現するのが難しいのです。
昨今SNSやYouTubeでトレーニング映像が出回っていますが、私の見た限りこのテンションができているのはほとんど高重量バーベルを扱っているものです。ケトルベルを振っている映像見てもこのテンションが実現していないのを見ます。
ではテンションとは?
大まかにいえば国内で言われる
体幹力、古来の日本で
下丹田、パベルがいう
腹を固めるです。
チェコ共和国では
赤ちゃんの呼吸と動作パターンを研究している機関があり、それを大人のアスリート機能改善に活かすプログラムを実施しています。日本でも年に数回開催されていますが、トレーニングを生業としている方や施術者の方にはお勧めです(
DNS – Dynamic Neuromuscular Stabilization According to Kolar)。
DNSのドリル1つ拝借するとこのような体勢で体幹力と腹式呼吸の実現が可能です。
3ヶ月うつ伏せ
3か月うつ伏せという姿勢です。
膝、肘、手をついてうつ伏せをしています。一見簡単に見えますが
肘の位置が目の真下にあることが腹部に絶大な負担をかけます。ここで
下腹部を膨らませながら鼻から吸い、鼻もしくは口から息を吐き出します。とにかく
呼吸を止めないでください。
これだけで
腹式呼吸と体幹に必要なテンションを養うことができます。ある程度これを行った後に普段行っているトレーニング種目をやってみてください。人によっては前より簡単になっている、回数が上がっている、より重い物が挙がるようになったなどの効果が得られます。