内務大臣宛嘆願書とそれに続く緊急の訴訟は、政府と裁判所の迅速な対応をもたらした。3月16日には、
刑務所や入管収容所における新型コロナウイルス対応手引きが公表された。そして、3月20日には翌週25日の法廷での審理が決定した。
その審理では、入管収容所の350人がすでに釈放されて736人が現状収容されていることと、
3か所の収容所において新型ウイルスの症状が確認されていることが新たに判明した。
しかし裁判所は、内務省が350人もの被収容者の釈放を実施したことや、被収容者に対して脆弱性のアセスメントを行なっていることなど、「
すでに必要な措置を講じている」として被収容者全員の釈放の要求を却下した。
350人もの釈放、そして裁判所の却下についてルディはこう話した。
「思った以上に釈放人数が多くて少し驚いたものの、
公衆衛生の観点からも、被収容者の釈放は政府がとりうる唯一のオプションだろう。内務省を支持した裁判所の決定は残念だ。今後はここまで大きな数の釈放は起こらないだろうが、小規模の釈放はありうるだろう。団体としては、今後も被収容者の釈放についてキャンペーンを続け、国会議員、議会に働きかけていこうと考えている」
まだ残る被収容者たちは引き続き感染のリスクに瀕している
ヤールズウッド収容所前での抗議活動。ここの被収容者は大半が女性
内務省は「収容所に到着した被収容者は、到着後2時間以内に看護婦から、24時間以内に医師からの診察を受けている。手洗いはすべての収容所で可能であり、石鹸などの消毒用品が十分に行き渡るように業者と密に連携している」と話す。
一方、NGO側は「
対策はまったく不十分であり、収容所内での新型コロナウイルスの全件検査をすべきだ」と主張している。収容所では検査をせずに複数名を一緒の部屋に隔離しているため、感染のリスクが高いという。
また「
被収容者への精神的な影響も大きい」とルディは指摘する。
「収容所内では、収容所からの新型コロナウイルスに関するアナウンスは特になく、自分たちで情報を得るしかない。ましてや誰かが釈放されている状況を見て、深刻な状況になっていることは分かる。だから余計に不安になり、みな感染の恐怖に怯えている」
NGO「Medical Justice」の医療専門家からは「
隔離・情報の欠如や健康上の不安が自傷や自殺願望を引き起こし、ほとんどすべての被収容者の精神状況が悪化している」という声があがっている。