予讃線では、JR四国8000系電車が振り子車両で、線路が貧弱で線形が悪い(曲がりくねっている)JR四国では、振り子列車でなければ高速運転のできる範囲はとても限られてしまいます。
これは国鉄時代からの懸案事項でしたが、競争相手の長距離バスは、四国の高速道路網が殆ど未整備だったためにあまり考える必要がありませんでした。松山と高知の間だけは、大きく香川県を迂回する鉄道(290km)に対して最短距離の国道33号線(120km)を通る国鉄急行バス(なんごく号)がもっぱら使われてきましたが、他区間での都市間輸送は鉄道が優勢でした。今日では、四国全県に高速道路網が整備されたため、鉄道の競争力は大きく下がっています。
JR化後、四国島内の高速道路整備に備えてJR四国2000系などの振り子車両を開発、投入し、優位を維持してきました。これは線路の改良には莫大な資金と時間が必要ですが、線形が悪い線路でも高速運転できる車両によって線形改良に近い効果を得るという考えによるもので、実際過去30年間にJR四国の特急列車網は大きく改善したと言えます。
これは将来四国新幹線が整備される僅かな可能性もあって、在来線への大規模な投資は二重投資になると言うこともありますが、やはりJR四国では土讃線、予讃線、高徳線の大規模改良という投資は企業体力的にたいへんに難しいという理由が大きいです。
JR四国2000系が登場して既に31年目になろうとしていますが、その間に過疎化と人口減少による市場規模の縮小、高速道路網の整備が進み、バスや自家用車との競争激化、航空機との長距離旅客需要の取り合いなどによってJR四国はたいへんに厳しい経営環境となっており、そういった中でJR化後に現れた車両の更新が必須となっています。
厳しい経営環境の中であっても貧相な車両を投入すれば見栄えと乗り心地のわるい車両が嫌われてお客が更に逃げてしまった旧国鉄末期の二の舞ですので性能と見栄えを落とすことなく低価格化、とくに運用費を下げる目的で開発したのが空気バネで車体を傾斜させる簡易振り子式のJR四国2600系です。ところが試運転をしたところ、なんと曲がりくねった線路が長く続く土讃線で運用するには圧搾空気が足りないというとんでもない欠陥が見つかり、量産化は中止されました。
結局、構造が複雑で運用にも手間とお金がかかりますが、JR四国2000系同様の制御付き自然振子式(曲線通過時の遠心力で自然に車体が振り子動作をするが、更に空気バネでも制御した車体の傾斜を行う)を採用したJR四国2700系に改良し、いよいよJR四国2000系の本格更新が始まります。
空気が足りなくなって使えない*という一見初歩的な欠陥ですが、工学ではこういったやってみて気がつく問題は多く、JR四国2600系とJR四国2700系の開発において生じたことはその教科書的な事例と言えます。
〈*空気タンクを大型化すると床下の場所が足りなくなり、屋根上に巨大タンクを置くと建築限界と重心上昇の問題が生じる。コンプレッサーを稼働させるとディーゼルカーの場合、馬力をコンプレッサーに取られて速度が大幅に落ちる〉
残念ながら運用コスト削減という目的は一部遂げられませんでしたが、JR四国では、次の20年30年を担う新車両への更新は進んでおり、とりあえず一息ついています。
しかし現状では、先細りの将来しかなく、JR北海道が陥っている鉄道事業継続自体が困難となる将来が来る可能性は否定できないために何らかの抜本的な経営体質改善につながるものが切望されています。実は、イベントの度に整備新幹線が来ないと厳しいという本音が見え隠れしているのですが、事業化の動きは全く見えず、JR四国の将来計画を迷走させるものとなっています。
とくに愛媛県は、香川県、徳島県といった本四架橋の恩恵が大きい二県、既に諦めて航空機、高速バス輸送に依存している高知県に比して生殺しの感があり、四国新幹線の誘致にはとても熱心です。