コーチングしているつもりがただの命令に……。部下をがんじがらめにする上司がすべきこと

 トップダウンの指示・命令によるマネジメントではなく、ボトムアップの傾聴によるコーチング型リーダーシップを発揮するリーダーが増えている。しかし、演習をしていると、コーチング型リーダーシップを発揮し始めていても、いつの間にトップダウンに移行してしまっているケースが多い。

コーチングが途中からトップダウンに

がんじがらめにする上司 私はコーチングを実践するために、5つのコーチング質問を繰り出す演習を実施している。この5つのコーチング質問で対話を始めても、途中からトップダウンになってしまっているケースが多い。  話しているリーダーは、5つのコーチング質問を口に出すことを意識している。そして、たしかに5つのコーチング質問を繰り出しているので、コーチングを実施していると思っている。  しかし、自撮りしたビデオを確認してもらうと、コーチング質問を繰り出しているようには見えない。トップダウンの指示・命令によるマネジメントが強調されてしまっているのだ。  どういう状況かというと、たしかに5つのコーチング質問は口に出しているのだが、それらの質問にメンバーが答えるたびに、リーダーが指示・命令をしている。メンバーが答えた内容に対して、リーダーが指示・命令を繰り出して以降、トップダウンの面談になってしまっているパターンもある。  一方、トップダウンの指示・命令も口にはしているが、全体として、コーチング型リーダーシップが発揮されている面談もある。それは、5つの質問に対するメンバーの返答に対して、指示・命令を一切加えずにリアクションし、指示・命令は5つの質問の最後に伝えている場合だ。

対話の順番を間違えると機能不全に

 つまり、コーチング型リーダーシップを発揮するポイントは、指示・命令ではなく5つのコーチング質問を繰り出し、メンバーが答えたあとにも指示・命令ではないリアクションを行う。指示・命令をしたかったり、しなければならなかったら、5つのコーチング質問が終わってから、最後の5つの質問の「サポートを得たいことは何ですか?」の質問に対してリアクションを終えてから、指示・命令を行うことだ。  つまり、「5つのコーチング質問」をはじめに行なって、完了させたから「指示、命令」をするという、対話の構成の問題なのだ。この順番を間違えてしまうから、コーチングが機能しない。 【5つのコーチング質問】 ①どうでしたか? ②うまくいったことは? ③うまくいかなかったことは? ④改善したいことは? ⑤サポートを得たいことは?「指示・命令」  コーチングを繰り出さなければと頭で思っていても、普段から指示・命令をする習慣がついてしまっているので、とっさのときに、指示・命令が出てしまうというケースもある。  中には、リーダーなのだから指示・命令するのが仕事だとはき違えていて、メンバーが発言したら指示・命令を組み込まなければならないと誤解しているケースもある。  最初はコーチングを繰り出していても、途中からトップダウンに移行してしまうケースは、「改善したいことは何ですか?」の質問のあとにメンバーが返答すると、そこから指示・命令に移行してしまうケースが多い。そこをぐっとこらえて、「サポートを得たいことは何ですか?」と質問することが、トップダウンに陥るか、コーチングが実施できるかのターニングポイントだ。
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部下へのリアクションはたったの5つ
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