コーチングしているつもりがただの命令に……。部下をがんじがらめにする上司がすべきこと

質問に対しては5つの受け身をとる

 このように申し上げると、「5つのコーチング質問をしてメンバーが答えたあと、リーダーはどのようなリアクションをすればよいのか」という質問があがってくる。「そもそもリアクションの方法がわかっていないから、いつもの指示・命令が口に出てくる」というわけだ。  指示・命令の代わりに、5つのリアクションスキルを発揮することがお勧めだ。5つのリアクションスキルとは、反復詳細要約例示経験のフレーズでリアクションすることだ。  反復とは、メンバーの発言を繰り返すだけだ。詳細とは、メンバーの発言をリーダーがもっている知識の範囲で詳しく言い換えることだ。要約とは、リーダーがメンバーの話の要点を話すということだ。メンバーの話に関連している、リーダーの思いつく例や実話を挙げるのが、例示や経験だ。  これらの5つの質問と5つのリアクションスキルを発揮していると、メンバーから信頼されるリーダーになろうということを思わなくても、信頼度が高まる。  これらのリアクションには、指示・命令が含まれていない。リアクションに注力しながら、5つ目の質問である「サポートを得たいことは何ですか?」までこぎつけることができれば、コーチングが実施できているということと同じことなのだ。

改善するための助けを探る

 質問:「サポートを得たいことは何ですか?」の質問の繰り出し方  「サポートを得たいことは何ですか?」の質問は、具体的にどのように繰り出せばよいのでしょうか?  回答:指示しないで質問する  「どのように改善したいですか」という質問に答えてもらったあとに、それを実現するために、サポートを得たいことを聞きます。 改善したいことを聞くと、上司としては、つい「それをやれ」「そうではなくてこれをやれ」と指示したくなるものです。しかし、そうしてしまうと、結局トップダウンの指示になってしまいます。  上司は、部下からサポートを得たいことを聞いて、全てでなくても一部であっても、できるだけそれをサポートすることを約束します。そうすることで、改善したいことを実施しようという部下の意欲が格段に高まり、パフォーマンスが飛躍的に向上します。 「サポートを得たいことは何ですか?」の質問表現の例は、次のとおりです。 〈事例〉「サポートを得たいことは何ですか?」の質問例 ・改善するために、サポートを得たいことは何ですか? ・その取組のために、どのような支援があれば嬉しいですか? ・壁を乗り越えるために、私で応援できそうなことは何でしょうか? 【山口博[連載コラム・分解スキル・反復演習が人生を変える]第180回】 <文/山口博>
(やまぐち・ひろし) モチベーションファクター株式会社代表取締役。国内外企業の人材開発・人事部長歴任後、PwC/KPMGコンサルティング各ディレクターを経て、現職。近著に『チームを動かすファシリテーションのドリル』(扶桑社新書)、『クライアントを惹き付けるモチベーションファクター・トレーニング』(きんざい)、『99%の人が気づいていないビジネス力アップの基本100』(講談社+α新書)、『ビジネススキル急上昇日めくりドリル』(扶桑社)がある
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