自治体直営山村留学施設、「宗教ハラスメント」疑惑に動き。児童の母親に届いた「最終通告」

 親の仕事の事情、そして自然豊かな環境に惹かれ山村留学を選択した母娘に降りかかった “レリジャスハラスメント(*立場を利用した宗教勧誘/religious harassment)”。山口県岩国市本郷山村留学センター所長/天理教分教会教会長によるレリハラ問題について、当サイトでも過去2回(前編後編)に渡って報じてきた。  第一報から2ヶ月、岩国市と天理教からそれぞれ回答があった。一方、母親には岩国市から“最後通告”とも読み取れるメールが届き、次年度の山村留学継続受け入れを見送る通知がなされていたことが判った。
児童の母親に届いた次年度継続希望の意思再確認メール

児童の母親に届いた次年度継続希望の意思再確認メール

市からの通告メール

 当サイトが昨年12月末と今年1月始めに報じた記事〈参照:自治体直営の山村留学センター所長が入寮児童と保護者にレリハラ/不適切宗教勧誘か(前編後編)〉が掲載された後、母親はセンターの保護者間LINEグループから排除されたという。そして1月20日、センターから母親に次年度の山村留学継続希望の意思を再確認する照会メールが届いた。その内容は母親を慄然とさせるものだった。  メールには1~7までの質問事項があり、それぞれに「はい」「いいえ」「その他」の選択肢がある。以下に列記する。 1 中学生女子のセンターへの受け入れのご要望に関して、岩国市としましては、中学生女子は受け入れ世帯(里親)に入居していいただくことでご理解いただくよう、これまで誠意をもって対応してまいりましたが、今後も岩国市及び岩国市教育委員会に対して受け入れの要望を続けられますか。 2 中学生女子を岩国市本郷山村留学センターに受け入れることに関して、インターネットやマスコミ等を使用し、活動をされることで、直接児童生徒の目に触れ、子どもたちが傷つくことになります。また、風評被害等によりセンターの運営に支障をきたし事業が成り立たなくなり、困るのは児童生徒ですが、今後も活動を続けられますか。 3 娘さんと〇〇所長が2人きりになる場合があることを承諾されますか。 4 岩国市及び岩国市教育委員会並びにその職員に対し「残忍な犯罪」「実行犯」等の言葉を今後、使用されますか。 5 今後、岩国市及び岩国市教育委員会の職員の実名を許可なく公表されますか。 6 今後、事実と異なる事項について公表されますか。 7 上記1~6の行為が、委託契約締結後に、行われた場合、委託契約を解除されることに同意されますか。  母親は中学生女子の受け入れ要望や署名サイトなどを用いた活動を行ってきたが、そのこと自体が、委託契約を解除する理由と設定されている。  メールを読んだ母親は驚いた。受け入れ要望自体が委託契約解除の同意事項とされていることに加え、所長に対する処分などセンター運営が改善される方向には事態が動いていないことが判ったからだ。母親は「違法性のある質問が含まれている」として「新しい質問票の作成」を依頼するメールを返信した。  質問事項に記載された「風評被害でセンター運営に支障をきたす」とは、どういうことなのか。市の担当者に確認すると、申込済みだった来年度の山村留学を保護者側から辞退したケースが数件あったという。また、担当者は当サイトの報道内容には実態との相違があると指摘、追って市からの回答に記載するとした。 「残忍な犯罪」「実行犯」との文言は、今年1月初頭に母親が岩国市へ送ったメールにある。中学生女子を受け入れてこなかった市側の責任を追及するメールの中で母親は、当サイトの記事を添え「このような残忍な犯罪が生じた理由」「実行犯の方は責任最大」と記していた。  今回のレリハラ騒動は道義的な問題であり、民法上の違法行為に問える可能性はあるものの「犯罪」「実行犯」との言葉を用いることは適切ではない。また、職員の実名公表について母親は「市職員の了解を得て公表したが1週間で消去した」と話している。 メールの内容を見る限り、これらの発信を特に市側は問題視したようだ。

天理教本部「誤解を招くような言動」

 また、今回のレリハラ問題について岩国市と天理教本部に送付していた質問書への回答があった。  まずは、1月28日に届いた天理教本部の回答を見ていこう。 Q:所長が交換条件(天理高校への進学と母娘の天理教入信)を提示したことについての見解。教会長が行った不適切な宗教勧誘について当人への対処 A:市の再任用職員である教会長が、その職員としての職務や里親制度に関連させて、入信を強要したと受け取られるような発言をしたとすれば、誠に遺憾です。○○氏(山村留学センター所長)には、今後誤解を招くような言動は厳に慎むよう申し伝えました Q:信徒が行う天理教里親連盟と今回の所長の問題との関連。里子への教化、里子に対する宗教教育についての見解 A: 天理教里親連盟(以下 連盟)は、各都道府県から里親認定された里親の任意の団体でありますので、行政の指導のもと指導に基づいて養育を行っています。連盟では日ごろから、子どもの発達に関すること、ペアレントトレーニングなどさまざまな研修を重ねて、子どもへの適切な関わり方を学び、養育の向上に努めています。連盟からは、信仰の強要は決してしないよう各里親に伝えています。殊更に教会では信仰に基づく日常生活を営んでいるため、日々の暮らしの中に祈りの時間や宗教的な行事がありますが、これについても強要はせず、あくまでも本人の意思を確認したうえで参加してもらうよう指導しています。これを徹底させるよう、あらためて各里親に促す所存です  センターの所長という優位な立場を使って伝道活動を行うような人物に教会運営をさせていることへの言及はない。また、天理教里親連盟については里子への信仰強要を禁ずる旨、そして信仰生活に関して「強要せず本人の意思を確認」と記載がある。しかし、年端も行かない里子の場合、意思決定自体が可能かという問題がある。また、ある程度自分の意思を発意できる年齢の里子であっても、里親の意向に沿わない選択が果たしてできるものか、里親に対し忖度をしてしまうケースも想定される。回答にある「意思の確認」が完全な自由意思を担保するものであるかについては疑問が残る。
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岩国市「誤解を招く不適切な発言」
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