「ご飯論法」が繰り出されるということは、そこに不都合な事実があるということ
では「ご飯論法」ではぐらかされる国会質疑には何の意味もないのだろうか。野党の質疑時間が膨大に奪われるという大きな問題があるのだが、まったく無意味なわけではない。
「ご飯論法」が繰り出されるということは、そこに不都合な事実があることが示されているからだ。
不都合な事実があるからそれを隠蔽しようとして「ご飯論法」が繰り出されるのだ。パンを食べていたという事実を開示しても差し支えないなら、最初から「朝ごはんは食べました」とか「パンを食べました」とかと答えるだろう。そう答えずに、「ご飯は食べておりません」と、あたかも何も食べていないかのように装うのは、パンを食べていたという事実を知られたくないからこそ、なのだ。
だからこそ、私たちは
「隠されたパン」に注目しなければならない。田村智子議員の質疑では、それは、
安倍事務所が後援会関係者を幅広く募っていたという事実だ。これは参加案内の文書を野党側が入手したことによって、のちに安倍首相は認めることとなった。
小川淳也議員の質疑であれば、「隠されたパン」は、
後援会関係者の誰が「桜を見る会」に参加したかという「記録」だ。その「記録」は残っているはずで、その「記録」を集計すれば、後援会関係者の参加者名簿は復元することができる。
ところで、「桜を見る会」では、安倍首相が何を隠しているか、何をごまかしているかは、誰の目にも明らかだ。
名簿は不都合だからないものにしたいのだろうし、前夜祭の明細書も出てくると困るから受け取っていないことにしたいのだろう。私たちには、「隠されたパン」が何か、今ではわかっている。
しかし、「桜を見る会」とは異なる多くの問題については、政府が情報を握っており、私たちには何が事実であるかがわからない。だからこそ野党議員が質疑で問うのだが、そこで「ご飯論法」が繰り出されると、事実にたどり着けない。しかし、そこに隠したい事実があるということはわかるのだ。「働き方改革」の国会審議でも、外国人労働者の受け入れ拡大のための入管法改正でも、統計不正をめぐる問題でも、そうだった。私たちは、その
隠された事実に目を向けなければいけない。そして、事実を隠さない答弁を求めていかなければならない。
さらに今、新型コロナウイルスをめぐって国内の状況は「これまでとは違う局面」に入ってきていると言われている(参照:
NHK)。そういう中で、不安をあおらないようにと政府が情報発信を抑制すれば、「不都合な事実」を隠しているのではないかとかえって疑心暗鬼を生むことになりかねない。加藤厚生労働大臣をはじめ、政府関係者には、適時・的確な情報発信をお願いしたい。
<文/上西充子 動画・図版作成:
国会パブリックビューイング>