隠された不都合な事実に目を向けるための「ご飯論法」という読み解き

聞き方が悪いという話でもない

 もう一つ「ご飯論法」に対して寄せられる批判が、「聞き方が悪いだけ」というものだ。「朝ごはんは食べなかったのか」と問うのではなく、「朝食は食べなかったのか」と問えばいいだけ、というのだ。  けれど、実際には聞き方を変えても誠実な答えは返ってこない。聞き方を変えて誠実な答えが返ってくるぐらいなら、最初から誠実な答弁をするだろう。とにかくパンを食べたことについては一切答えない、というのが「ご飯論法」なのだから、「朝食は食べなかったのか」と問われても「ご飯は食べておりません」という答弁が繰り返されるだけだ。  この点について、1月28日の衆議院予算委員会における小川淳也議員の安倍首相に対する質疑を紹介しておこう。これも「news23」で紹介されたものだ(番組では一部を省略して放送された)。国会パブリックビューイングの2月3日の街頭上映映像の10分3秒からだ。  ここでは小川議員は、「ご飯論法を避けるために」と、慎重に限定した聞き方をしている。推薦者名簿がなくても、後援会名簿の中に、「桜を見る会」への参加の有無がわかる「記録」があるはずだ、と問うているわけだ。つまり、「ご飯」を食べていないのはいいとして、「パン」は食べましたよね、という聞き方をしているわけだ。それでも安倍首相は、頑なに「パン」(=後援会名簿に残されている「記録」)については言及を避けたのである。 **************** ●小川淳也議員:私、一つ疑問がありまして、仮に、本当に政府で、私は違法だと思いますが、文書を廃棄しているとしましょう、仮に。  しかし、総理の事務所には、今、いろいろ問題になっていますね、ジャパンライフの山口氏はどうなのか、反社会的勢力が入り込んだことはどういう経緯なのか、あるいは何人ぐらい推薦しているのか、あるいは前年との重複はどうなのか、このへんを検証するために、仮に名簿を政府が廃棄していても、安倍事務所にはあるはずだと思うんですが、その点、きのうご確認をお願いしておりますので、既に廃棄しているという答弁も国会でちらほらお見受けしますが、改めて確認していただいたはずですので、その点、ご答弁いただきたいと思います。 ●安倍晋三首相:事務所に確認をしたところ、推薦者名簿は既に廃棄をしている、これはもう既に申し上げている、同じご質問を何回かいただいておりますので、同じ答弁でございますが、それ以外に桜を見る会の招待を確認できる名簿等は作成をしていないということでございます。 ●小川淳也議員:ちょっと、ご飯論法を避けるために、念入りにお尋ねしますが、仮に、内閣府への推薦名簿を事務所も破棄したとします、仮に。  しかし、私ども、政治活動をするにあたって、当然、慎重に後援会名簿というのは管理しているわけですね。これはどなたもそうでしょう。そして、どの方がどの行事に参加をしてくださった、あるいは、どの方にはどの案内を発送している、どういう返信があった、こういうことは名簿を管理していくにあたって、きわめて基本的な事項なんです。政治活動をする以上。  したがって、仮に推薦名簿を形の上で総理事務所で廃棄していても、おそらく総理の後援会名簿には克明に、何年の桜の会案内者、何年の桜の会参加者ということが記録されているはずだと思います。その点、きのう確認をお願いしましたので、ここでご答弁いただきたいと思います。 ●安倍晋三首相:ただいま答弁をさせていただいたとおりでございます。 ●小川淳也議員:それは、後援会名簿にも記録が残っていない、たどりようはないというご答弁ですか。 ●安倍晋三首相:先ほど答弁させていただいたとおりでございまして、作成を、して、え…あの、お…、え…作成したものについてですね、残っていないということでございます。 ●小川淳也議員:作成した名簿を廃棄していることは仮に仮定として置くことは、もう既にうなずいています。  その上で、仮に廃棄していたとしても、後援会名簿の本体に記録が残っているでしょうということの確認をお願いしています。 ●安倍晋三首相推薦者名簿は、これはもう同じ答弁なんですが、既に廃棄をしており、それ以外に、先ほども答弁させていただいたんですが、桜を見る会の招待を確認できる名簿等は作成をしていない、こういうことでございます。 ●小川淳也議員:微妙にすれ違い答弁ですね。名簿の作成云々は聞いていません。記録が残り、履歴をたどることができるはずだというお尋ねです。 ****************

限定して質問しても論点をズラして答える姑息さ

 「仮に推薦名簿を形の上で総理事務所で廃棄していても、おそらく総理の後援会名簿には克明に、何年の桜の会案内者、何年の桜の会参加者ということが記録されているはずだと思います」「それは、後援会名簿にも記録が残っていない、たどりようはないというご答弁ですか」「仮に廃棄していたとしても、後援会名簿の本体に記録が残っているでしょうということの確認をお願いしています」と、小川議員は具体的に限定した同じ質問を三度にわたって繰り返しているのだが、安倍首相は「桜を見る会の招待を確認できる名簿等は作成をしていない」と、論点をずらして答えており、後援会名簿に記録があるかどうか(=パンを食べたかどうか)については頑なに答えようとしない。「参加」の「記録」の有無を問うているのに、「招待」を確認できる「名簿」の「作成」について答えている。「パンを食べたか」と限定して問われているのに、「ご飯は食べていない」とあくまで話をそらしているのだ。  だからこれは、聞き方の問題ではない。あくまで答えない、という答弁者側の問題だ。  答弁者側がこういう姿勢だと、いくら同じ質問を繰り返しても、時間が奪われるばかりで、何も実のある答弁が得られない。このあと小川淳也議員は再び、2月5日にもさらに丁寧に限定をして同じ問いを重ねるのだが、、安倍首相は話をはぐらかし続けた。その様子は、2月10日の街頭上映映像で紹介した。
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「ご飯論法」こそは「不都合な真実」が存在する証
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