伊方原発3号炉インシデントは何が起きていたのか? 公開情報から読み解く「正体」

四国電力2/7発表

 愛媛新聞による報道の翌日、毎日新聞による報道の12日後、インシデント発生から13日経過した時点でようやく四国電力は、最低限とはいえ時系列が分かる情報を公表しました。
四国電力発表文書の図版

2020/02/07四国電力より(2/12現在ホームページ上のリンク元が消えている)

 この発表によると、インシデント発生後約10秒でDGが電圧確立し、約7分後に500kV主回線の受電開始、約27分後に負荷をDGから外部電源へ切り替え、約41分後にDG運転中止しています。また約2分後に海水ポンプ等が自動起動、約43分後にSFP冷却系が自動起動しています。  これらは、ここまでの筆者による推測とほぼ一致しています。  今回のインシデントでは、最大の注目を集めたSFPでもPWRの冗長性の範囲内で収束していることが分かります。  阿蘇カルデラ噴火などの火砕流やNBC(核・生物・化学)兵器による攻撃といった所内人員が全滅し、支援要員も来られない極端な状況では、原子炉停止中であっても3日以内にSFP起因のSAが生じる可能性があることも分かりました。このような想定をどう扱うかは、今後の社会的合意形成(Public Acceptance)が必須でしょう。そうでなければいつまでも司法リスクが存在し続けます。  この程度の文書は、インシデント発生後3日以内に発表できる程度のものですから、毎日新聞による報道前後には四国電力から発表していれば騒ぎは大きくならず、評判を落とすこともありませんでした。  相変わらず「インシデント」の「トラブル」や「ミス」といった工学、とくに安全工学では無意味且つ逆効果で姑息なことをせずとも、事実を迅速に公表すれば良いだけです。  今回の重大インシデントは、四国電力から愛媛県庁への第一報こそ合格点と思われますが、その後の情報伝達、報道発表、続報の公開についてはかなり問題があると考えます。  第一報の県庁内での6時間の滞留に始まり、とっちらかって一箇所では見つからないホームページ上の発表のありか、現れたり消えたりする発表へのリンク元など、初歩的なところで大きな問題を感じます。せめて発表文は一箇所にまとめ、一度表に出した文書へのリンクを消すようなことはないようにしないと、市民にあらぬ不安と疑惑をかき立てることになります。また文書には更新履歴を必ず残してほしいものです。  さて次回は、四国電力による続報によって不明だったことがかなり明らかになりましたので、そのことについて述べて行きます。 ◆伊方発電所3号炉第15回定検における重大インシデント多発(5) <文・写真/牧田寛>
Twitter ID:@BB45_Colorado まきた ひろし●著述家・工学博士。徳島大学助手を経て高知工科大学助教、元コロラド大学コロラドスプリングス校客員教授。勤務先大学との関係が著しく悪化し心身を痛めた後解雇。1年半の沈黙の後著述家として再起。本来の専門は、分子反応論、錯体化学、鉱物化学、ワイドギャップ半導体だが、原子力及び核、軍事については、独自に調査・取材を進めてきた。原発問題について、そして2020年4月からは新型コロナウィルス・パンデミックについてのメルマガ「コロラド博士メルマガ(定期便)」好評配信中
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