「〇〇を食べれば、がんが治る」は誤り! 最新のがん治療の知られていない現実

がん治療イメージ がんの治療は、現状でどこまで進んでいるのだろうか。なかには「がんはもうすぐ不治の病ではなくなる」といった声もある。実際のところはどうなのか? 画期的な最新医療は富裕層しか治療を受けられないのではないか?  「二人に一人がガンになる」と言われる今、最先端治療はどこまで現実になっていて、「がんは撲滅される」というのは本当なのだろうか? これをすれば、これを食べればがんが治る! というような情報もはびこっているが、それは効果があることなのか?  そんながんについてのさまざまな疑問について、『二人に一人がガンになる 知っておきたい正しい知識と最新治療』(マイナビ新書)を上梓した医療ジャーナリストの村上和巳氏に聞いた。

過去15年ほどで多くの新薬が登場

――そもそも本書を執筆したきっかけはどのようなものだったのでしょう? 村上:実は私の場合、取材領域が医療、国際紛争・安全保障、災害・防災にまたがっています。このうち医療は、約四半世紀前に新卒で医療専門紙の記者になった頃から、時期による取材量の多寡はあるものの、最も長期間取材している領域です。  そのなかでも、がんは主要な取材テーマの一つでしたが、四半世紀前は記者の取材テーマとしてがんは傍流でした。当時は、がん治療がある意味停滞状態だったからです。ところが過去15年ほどで数多くの新薬が登場し、劇的に進歩しました。  例えば、2018年に京都大学の本庶佑教授がノーベル医学生理学賞を受賞した「免疫チェックポイント分子の研究」は、そのまま画期的な免疫チェックポイント阻害薬・オプジーボの登場につながっています。  そうした動きを追いながら私は記事を書いていたのですが、それが編集者の目に留まり、執筆の提案がありました。ただ、正直言うと、当初は引き受けることに若干戸惑いがありました。

主張が明確でわかりやすい本ほど売れているが、医学的には不正確

――その戸惑いとは何でしょうか。 村上:本来、出版社が医療に関する書籍を企画した場合、医師に執筆を依頼しますし、私もその方が望ましいと思っていました。だから、私が書いていいものかという不安があったのです。ただ、提案してくれた編集者は「ジャーナリストの立場から俯瞰した目で書いた本を出したい」という意向でした。  私自身、医師が執筆した一般向けのがんに関する書籍は数多く目を通しています。私の印象では、そうした書籍は、「主張が明快で分かりやすいが内容は医学的に不正確」「一般人にはやや難解なものの内容は正確」という2つに大別できます。  前者のような書籍を執筆する医師の意図は推測しかできませんが、ご自身が目立ちたいだけなのだろうと考えています。ところがこの不正確な内容の書籍ほど売れているのが現実です。私自身は後者の医師とほぼ同じ考えですので、こうした状況を長らく苦々しく思ってきました。  編集者からの提案を受けて、四半世紀にわたって執筆という仕事をしてきた経験から、正確な内容でより分かりやすい本を目指せないかと思いました。また、提案を受けた時期にちょっと珍妙な経験をしたことも執筆の動機になっています。
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「〇〇を食べればがんが治る」ということはない
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