杉本彩さん「ペットの生体展示販売という、野蛮なビジネスモデルをなくしたい」

動物を迎えるルートはペットショップ以外にもたくさんある

杉本彩さん3 では、“買う側”の立場としては何ができるのだろうか? 「まず、『疑う』ことです。ほんの少し想像力を働かせれば、誰もが生きている動物が『モノ』として売り買いされていることの異常さに気づくはず。  あたかも動物への愛が溢れているかのように生体展示販売されている動物は、どういう環境で繁殖させられたのか。そうした疑問を投げかけることが悪質なペットビジネスを根絶させるための第一歩になるんです。  また、動物を迎えるときに『ペットショップでは買わない』という選択をすることもひとつの手段になりますね。買う人がいるから売るというのが悪徳ペット業界の言い分です。ならば逆に言えば『需要がなければ供給は不要』ということになります。  買う人がいなければ利益も生まれず、そんなビジネスは自然に淘汰されていくはずです。保護犬・保護猫など、ペットショップでなくても動物を迎えるルートはたくさんあります」

日本はヨーロッパ諸国より100年は遅れている

 動物愛護先進国のドイツでは、国がペットショップへの規制を強めて厳しいルールを設けたことでビジネスが成り立たなくなり、生体展示販売が激減したという。 「動物にやさしい社会をつくるには、売る側を厳しく追及するだけでなく、買う側の意識や姿勢を変えていくことも不可欠なのです  日本における動物の置かれた状況は、イギリス、ドイツ、オランダといったヨーロッパ諸国とくらべて、100年は遅れていると感じています。  もちろん日本にも、豊かな動物愛護の心を持っている人は大勢います。ただ、動物の視線に立って動物にとっての幸せを考える『動物福祉』という点では、まだ圧倒的に未成熟。  いまだに平然と行われている生体展示販売は、その象徴とも言えます。『動物福祉』が守られないこの野蛮なビジネスモデルがなくならない限り、日本はいつまで経っても動物愛護先進国にはなれないでしょう」  来年には東京オリンピック・パラリンピックが開催され、多くの外国人が訪れる。日本のペット産業は、彼らにとって奇異に映るだろう。 「『日本では、いまだに店頭で動物を売っているのか?』と世界が驚愕し、軽侮されるでしょう。“命の売買”に歯止めをかけられるのか。日本の民度が今、問われています」
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動物愛護先進国・イングランドの決断
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