もうひとつ、ペット問題に大きな影響を及ぼしているのが法律だ。
「動物愛護法の基本原則では『 動物は命あるもの』なのですが、刑法上では『器物』、民法上では『動産』と、いまだに『モノ』として一括りにされています。
その根っこには『動物は人間の管理下にあり、人間が好き勝手に扱ってもかまわない』という傲慢さが感じられ、それが動物を商品としてしか見ない風潮の後押しにもなっているように思います」
また、悪質なペット業者が絶えない要因には、開業のハードルの低さも挙げられると杉本さんは言う。
「大きな問題のひとつは、動物愛護法ではペットショップや繁殖業者、ペットホテルやトリマーといった営利目的で動物の取り扱いを行う業者(第1種動物取扱業者)が登録制だということ。
つまり、登録さえすれば簡単にペットショップや繁殖業を開業できてしまうんです。その昔はもっとハードルが低い届出制でした。
こうした誰でも開業できるという“間口の広さ”が悪質な業者を産み出す温床になっているのは間違いありません。人と同じ尊い命を扱う業者に対しては、ザルのような登録制ではなく、免許制にするなど厳しい規制が不可欠だと思います」
生体展示販売がなくならないのは、売る側だけでなく「買う側」の意識も関係していると杉本さんは指摘する。
「今は、ほしいものがほしいときにすぐに手に入る世の中です。でもその便利さや手軽さを動物との出会いにまで求めることの異常さに、買う側が気づかなければいけないんですね。
生体展示販売によって、日本では誰もがほしいと思ったらその場ですぐにペットを購入できてしまいます。ショーケースを見て、抱かせてもらって『かわいいから』と、ぬいぐるみのような感覚で衝動買いする。
きちんと面倒を見られるのか、ペットを迎えられる環境は整っているのか、整えられるのか、維持できるのか。冷静に検討もしないまま、その場の感情に流されて買ってしまう。
買う側の安易で無責任な消費行動が、生体展示販売という残酷なビジネスモデルを成立させ、動物を苦しめ続けていることを自覚するべきです」