人が少ない
階段を昇って、上等な船室の階へいくとこちらも客はいない。星希はあちこちに外のデッキのあちこちに灰皿がおかれていて、みんな夜の海を眺めながらワイワイと煙草を飲んでいたはずだが、人っ子一人歩いていない。もちろん、そんな調子だから風呂も空いている。以前は、限られた時間でお互いに遠慮しながら使っていた大浴場にも人は少ない。船の揺れにあわせて浴槽のお湯がゆらゆらと揺れているのがもの悲しい。
消灯時間となり灯りが消えれば後は寝るだけ。翌朝、下船時刻が近づき荷物をまとめてロビーで行列をつくる。改めて乗客の少なさに驚く。下船して、ターミナルへと続く長い通路を歩きながら船を振り返ると何台ものトレーラーが荷物を下ろしていた。様々な負の感情が渦巻く日韓関係とは別に経済的な関係性はいまだに強固なのだと、改めてわかった。
釜山の町
今回、釜山に立ち寄ることを決めた時にいろんな言葉を投げかけられた。
「え、いま韓国にいって大丈夫ですか?」
「きっと前とは違いますよ」
「危ないですよ」
「くれぐれも気をつけて!」
別に政治的な意見や負の感情のない人。普段は韓流ドラマやアイドルを楽しんでいる人までこんなことをいうのだ。
確かに多少の不安はなくもなかった。なにせ筆者は韓国語は挨拶程度しかわからない。メディアや政治家の発言を通じた負の感情が、ちょっとした行き違いを大げさにしてしまうのではないか。
でも、まったくそんなことはなかった。
釜山の町